逝く春

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 【敵】はその禍々しい爪で、天野の頭を地面に打ち付けた。そして、彼が動かなくなったことを確かめてから、舌舐めずりするようにゆっくりと森野の方に向いた。顔には眼が無く、虚が広がっていた。 「メ、メヲヨコセ…」  片言の言葉で確かにそう呟き、森野に飛びつこうとしたとき、【敵】は横に吹き飛んだ。頭から血を流しながら、天野が全身で【敵】に飛びついた。そして、目茶苦茶に殴り続けた。 「シツコイ、ニンゲン!!」  天野は軽く吹き飛ばされた。しかし、まだ立ち上がろうとした。思わず森野は彼を庇うように抱きとめた。それを好都合と【敵】が爪を振り上げたとき、無数の矢、銃弾が、それを貫いた。 「ユルサヌ、ニンゲン…」  【敵】が負け惜しみを呟く隙を与えず、連撃が行われ、それは全く動かなくなった。そこでやっとスーツ姿、迷彩服の防護姿の人々が出て来て、二人に頭を下げた。 「遅くなりました、防衛省・宮内庁特殊課の橘と申します。」  天野は病院に送られ、森野は初めて己の運命を聞かされた。  
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