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「内密に監視し、確固たる証拠を掴んだ上で、駆逐すること。ベラナ師からもそう厳命されている」
「それで確固たる証拠とやらは、いつ掴めるんです? 悠長に構えて犠牲者が増えれば、教会の怠慢だと非難されても反論できませんよ」
「それはそうだが……お、おい、どこへ行くつもりだ!」
ウルバノが慌てて声を上げたのは無理もない。
診療所へとアルヴィンが歩き始めたのを見て、腕を掴む。
「何を考えている? 不用意に接触するな」
「進まなくては、いつまでたっても解決しませんよ」
手を振りほどくと、診療所へと足を向けた。
ウルバノは目立つことを嫌ったのか……それ以上は追い掛けてはこない。
診療所の入り口に立つと、アルヴィンは立て付けの悪い扉を開いた。
待合室には、くたびれたソファーが置かれ、十人ほどの患者が腰掛けていた。
頭の裏が、チリチリと焼けるような独特な感覚が、狭い室内には満ちていた。
魔法の痕跡を、人はそう感じ取る。
アルヴィンはその力が特に鋭敏だった。
この診療所が、魔女とは全く無関係、というわけではなさそうだ。
「こんにちは。初診の方ですか?」
足を踏み入れると、受け付けにいた少女が駆け寄ってきた。年齢は、同い年くらいか。
アルヴィンは胸元に懸けた、青銅の蛇が巻き付いた銀の十字架を見せる。
「この通り教会の者だ。クリスティー医師はいるか?」
「せ、先生は診察中ですが……」
教会という単語に、少女は快活な笑みを強ばらせた。
と、同時に、背中に向けて複数の敵意のこもった視線が照射されるを感じる。
どうやら自分は、招かれざる客のようだ。
「ちょ、ちょっと待ってください! 先生はお忙しいんです……って、訊いていますか!?」
診察室は見たところ、受付から少し奥まった先にあった。
少女の制止を無視して、足を向ける。
奥に向かうほど、より濃密な魔法の痕跡が感じられる。
魔女との接触は、慎重であるべきだ。
そうあるべきだが……今ほどの好機はないと、アルヴィンは確信していた。
魔女は、日中は魔法を使えない。
魔力の源泉は、月だと言われる。つまり、魔法が使えるのは月夜に限られるのだ。
クリスティー医師が仮に火の魔女だったとしても、踏み込んで即火だるまにされる心配は、今はない。
扉をノックもせず、アルヴィンは診察室に踏み込んだ。
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