第4話 無礼な来訪者

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第4話 無礼な来訪者

 そこは、机とベッドが一つあるだけの、簡素な部屋だ。診察の合間だったのか、患者の姿はない。  白衣を着たダークブロンドの女性が、椅子に腰掛けているだけだ。 「あなたは?」  診療録を書く手を止めると、彼女は顔を上げた。  百合の花を思わせるような気品を(まと)った、目鼻立ちのはっきりとした妙齢の美人だ。縁なしのメガネをかけ、眼差しは知性を感じさせる。  年の頃は、想像していたよりもずっと若かった。二十代の半ばくらいか……もっとも、魔女の年齢など外見があてになるものではないが。 「僕は審問官アルヴィンだ」  追いかけてきた少女が、背後で息を呑む気配が伝わってくる。  正確に言えば、審問官ではない。その見習いで、しかも六日後にはクビにされかねないという危うい立場である。  だが、そんな情報を馬鹿正直に与える必要もない。 「上級審問官ベラナの命を受けてここに来た。クリスティー医師か?」 「そうよ。審問官、という割には、随分お若いのね?」  審問官を前にすると、一般市民は少なからず動揺するものだ。  だが彼女には、物怖じした様子が一切ない。それどころか、アルヴィンの心中を見透かしたような言葉を投げかけてくる。  十六歳の少年が審問官の威厳(いげん)を見せるのは、少々荷が勝ちすぎているのは事実だ。それでもアルヴィンは、できるだけ重々しく宣言した。 「今から君を審問する。(いつわ)りなく正直に答えることだ。審問官に噓は通じない」
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