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「エレン、心配しないで。私なら大丈夫よ」
「でも……先生……」
クリスティーは少女の肩にそっと手を置くと、首をかしげた。
「不思議ね。あなたはまだ若いのに、どうしてそんなに魔女を憎むのかしら?」
「魔女は父の仇だ。恨んで当然だろう」
険しい視線を向けて、アルヴィンは続ける。
「僕の父は審問官だった。だが、十年前に白き魔女と戦って死んだよ」
白き魔女は、傑出した力を持った魔女だった。
十年前、駆逐に多数の審問官が投入されたが、その多くは殉教した。七昼夜に渡った戦いの末、上級審問官ベラナによって駆逐されたとされている。
「僕は、白き魔女がまだ生きていると疑っている。審問官になったのは奴を探し出し、父の仇を取るためだ」
「あなたは……」
何かを言いかけて、クリスティーは口をつぐんだ。
アルヴィンの心情的には、そのほうがありがたかった。
下手な同情の言葉など必要ない。まして、彼女は魔女なのだから。
とにかく、言質は得た。
今日ここに来た目的は達成したのだから、長居する必要はない。
「今日はこれで失礼する。だが、近いうちに君を駆逐する。覚悟しておくことだ」
診察室を出るアルヴィンの背中に、彼女は言葉を投げかけた。
「魔女が悪だと言うのなら、教会と私、どちらが街のために尽くしているのか、皆に訊いてみればいいわ」
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