第6話 不都合な後輩

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「お前のおかげで、我々が監視していることが気取られた。このことは、ベラナ師に報告させてもらうぞ」 「お好きにどうぞ。それと会いに行くなら、これを渡してもらえませんか?」  アルヴィンの手には、クリスティーから渡された紙袋がある。 「これは何だ?」 「犯人が現場に遺した遺留品です。これを鑑定すれば、犯人が誰かはっきりするでしょう」 「……分かった、渡しておこう」 「あと、確かめたいことがありますので。明日は、僕一人で行動させてもらいます」  それは流石に禁じられるかと思ったが、あっさりと受け入れられた。  もちろん条件付き、ではあるが。 「くれぐれも軽挙は(つつし)めよ。今度同じ事をしたら、七日を待たずに教会から去ることになるぞ」 「分かっていますよ。ところで、審問官ウルバノ」  厄介事の気配を察したのか、ウルバノは不機嫌に睨んだ。 「まだ何かあるのか?」 「ただの質問ですよ。あなたは善良な魔女がいると思いますか?」  善良な魔女とは、自分でも矛盾したことを口にしているという自覚はある。   ウルバノの返答は、冷ややかなものだ。 「魔女は二通りいる。悪しき魔女と、善良を装った悪しき魔女だ。迷う前に撃て。そうしなければ、死ぬことになるぞ」
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