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第8話 真夜中の共闘
「こっちよ!」
クリスティーに腕を掴まれて、アルヴィンは走りだした。
黒煙が急速に濃度を増し、真っ直ぐ走ることさえままならない。
「せいぜい必死に逃げ回ることだ。早々に死なれては、なぶる楽しみがなくなる」
瓦礫に脚をとられながら走る背中に、優越感と悪意に満ちた声がぶつかる。
次に銃声が響いた直後、クリスティーはバランスを崩し、転倒した。
「── っ!!」
苦痛で、顔が歪む。
左脚を射貫かれたのだ。見る間に布が赤く染まっていく。
「このおっ!」
クリスティーの声と共に水の束が生まれ、鞭のようにしなった。それは蛇のようにうねりながら、地面を叩きつける。
もし直撃していれば、ひとたまりもないだろう。
アルヴィンは肩を貸すと、手近な廃墟の影に隠れた。
「やったと思うか?」
「手応えはなかったわ。牽制くらいにはなったかもしれないけれど」
痛みに眉をしかめながら、彼女は傷の応急処置をする。
医師だけあって、この辺りの手際は実にいい。
「あなたも銃を持っているんでしょ? あのイカれたお仲間を、なんとかしなさいよ!」
柳眉を逆立てるクリスティーに、アルヴィンは肩をすくめた。
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