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第9話 取引をしましょう
「さて、どこにいるか分からない敵をどう倒すか、手はあるかしら?」
「……さっき銃弾を防いだ水の魔法は、二十メートル離れた場所に呼び出すことができるか?」
「可能だと思うけれど。何を考えているの?」
質問は、彼女の興味を引いたようだ。
アルヴィンは手短に説明する。
「拳銃の射程は、せいぜい二十メートル程度だ。奴がどこにいるにせよ、その範囲内に潜んでいることは間違いない。水塊の中に閉じ込めて、奴を失神させて欲しい。後は、僕が片付ける」
「それだけの範囲を水で満たすのは、精神が持つかどうか……。他の魔法じゃ駄目なの?」
呼び出す水量に比例して、制御は困難になる。
簡単に言ってくれるが、全て満たそうとすれば、二百トン以上の水量となるだろう。
アルヴィンは首を横に振った。
「魔女の関与が疑われるようなやり方は避けたい。後々、話しが面倒になる。それに、全てを水で満たす必要はないんだ。僕が囮になって飛び出す。銃声から、ウルバノの位置を絞り込めるだろう?」
「囮……それは、駄目よ!」
「時間がない。行くぞ!」
クリスティーが制止しようとした時には、アルヴィンは飛び出していた。
呼応するかのように、すぐさま銃声が響く。
「こっちの返事も聞かずに飛び出して! 死なれたら、夢見が悪いじゃない!」
憤りながら、彼女は感覚を研ぎ澄ました。
銃声が響いた。一発、さらにもう一発。
普段なら、容易に位置は特定できただろう。
だが廃墟に複雑に反響し、前か後ろかでさえも判別が難しい。
焦りが募り、額に汗が浮かぶ。
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