第1話 招かれざる見習い希望者

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 首切りのベラナ。  それが審問官見習いの間で、この老人につけられた渾名(こんめい)だ。  学院を卒業し見習いとなった者は、一年間、現職の審問官に師事する。  だが、ベラナに師事した見習いで、いまだかつて一人前となった者はいなかった。後進の教育に、一切の興味を示さないことで有名なのだ。  それを承知の上で、アルヴィンは上級審問官ベラナを指導官として希望した。  目の前の老人が、過去に凶悪な魔女を幾人も駆逐(くちく)した、卓越(たくえつ)した審問官だったからだ。 「私が不適格とすると分かっていて希望するのは、想像力が欠如している。審問官を目指す者としては致命的だな」 「お言葉ですが、あなたほど魔女との戦いに精通した者はいません。僕の師となり得るのは、他にはいないでしょう」 「その減らず口を撤回(てっかい)するのなら、より良い師に師事できるよう、枢機卿(すうききょう)に手紙を書いても良いのだがな」 「不要です」  アルヴィンは即答した。  老人は書物に目を落としたままで、表情は読めない── 要するに、相手にされていない、ということだろうが── 身の程知らずの見習いに、内心舌打ちしているのは間違いない。 「よかろう。では、”火の魔女”を一週間以内に駆逐すること。その課題がこなせれば、指導官を引き受けよう」 「期限は一週間ですか」 「それでできないのなら、一年をかけても同じ事だ。やめるかね?」  魔女を狩る術を学びに来た者に、魔女を駆逐して来いとは、随分(ずいぶん)な無茶ぶりである。  足元を見られていることに内心不満はあったが、受け入れる以外に選択肢がないことは明白だった。 
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