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2024.4.15
※創作/読み切りSS 不穏姉妹百合
人は1回しか死ねない。
この世には”輪廻転生”という論を唱える人もいるが、それはきっと死ぬことを恐れた人の戯言だと僕は思う。
赤く濡れている乱雑に脱ぎ捨てられた服の上に乗り、それはそれは美しくない最早醜いとも言える顔で天を仰ぐ梓が目の前に居た。
「アズ、太陽が登るよ。」
この声も梓には届いていない。梓の顔はぐしゃぐしゃに潰れている。
いつもの梓なら、「ユメ、今日も1日頑張ろうね。」なんて笑ってくれたのだろう。
僕はこんなに梓のことを”愛して”いるのに、それでも梓は僕のことは”好き”なのだ。仕方がないだろう、”姉妹”なのだから。この壁は消えないし、消えてはいけない。それでも僕は梓とひとつになりたい。
だから僕は、輪廻転生した梓に会えることを願った。
一昨日、僕は言った。
「明日の月は綺麗だろうね。」
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