雨の日に

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さすがに少しおかしいと思って、右手で首元を抑えようとする。 すると、何かを感じ取ったのか先生は左手を動かした。 「こら、動くなと言っただろう」 パシッと右手首をその左手で掴まれて、棚に押し付けられた。 結構強く押さえつけられているようで、身体も弱っているからか動かせない。 …なに、これ。これ、普通なのか? 冷や汗がポタ、と地面に落ちる音がした。 どうしよう、どうしよう。目の前にいる担任の先生を怖いと思ってしまうなんて。 先生は俺の様子はお構い無しのようで、第二ボタンまで外して露わになった首筋を、右手でそっと撫でた。 「んっ……、あ、の…」 サワサワと撫でられて、身震いする。 「んー、熱はないか?いやでも…」 ボソボソと呟きながら首筋を掌がなぞり、だんだん下の方へ泳がせていく。 「…んゃ、あ……っ」 「擽ったいか?もう少し我慢な」 やっぱり何か変だ。 こんな動きで熱が測れるのか?そもそも首で熱は測れるもの? 狭くて暗い、物がぎっしり詰まった準備室なんかに人は来ない。 じわ…と瞳に涙が滲み、不安でいっぱいになる。 抵抗しようにも身体が重くて動かない。頭がくらくらして、何も考えられない。震えて声も出ない。 ─────だれか、助けて。 ぎゅっと目をつぶった。 その瞬間、 ガタッッッッッッッ!!!!!!!!! 教室の引き戸が勢いよく開き、驚いて思わず目を見開く。先生も手を止めて光さすその方向を見た。
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