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普通は先生と生徒が2人で出て行ったことなんて気にする必要は無い。
でもあの藤田の態度がどうしても引っかかる。なんで嘘までついてまで俺を行かせたのか。
何か嫌な予感がする。
「ごめん、俺がいない間に茜がもし戻ってきたら俺に電話してって伝えてくれるか?」
「ああ、わかった…なんかあったのか?」
「そういう訳じゃないんだけど…ちょっと探しに行ってくる」
「了解。立花体調悪そうだったしなー。ちょい心配」
やっぱり他のクラスメイトから見ても今日の茜は明らかに体調不良だった。
急いで教室を後にして、再び廊下を駆け抜ける。
走りながら茜の携帯に電話をかけてみても、以前学校がある間はマナーモードにしていると言っていたから出る可能性は低い。実際に何度かけてみてもかかること無く、無機質な電子音のみが流れていた。こういうところで真面目なところが裏目に出る。
「はぁっ、くそ…っ」
さすがにさっきから走りっぱなしで息が切れてくる。
こんなことになるなら普段からもっと運動しておけば良かったと後悔した。
廊下ですれ違った知り合いや友達に声をかけながら走ったけど、茜を見かけた生徒は一向に見つからない。
「はぁ…はぁ…っ、あれ?」
ふと見覚えのない景色が見えたから止まってみると、ひたすらに走っているうちに普段通らないような所まで来てしまったみたいだ。
慌てて辺りを見渡すと、目の前には『Aクラス』の文字があった。
うちの学校はそれなりにデカくて、2年はAからJまでの10クラスある。
ちなみに俺と茜はIクラスだ。
ここは校舎の端でこれ以上先に道はないし、行き過ぎたと思い右回りして来た道を戻ろうとした。
その時、少し前を歩く特徴的で彩やかなオレンジ色が目に映る。
こいつが茜の行き先を知っているとは思えないけど、今はなりふり構っていられない。
少し大きめに息を吸って、名前を呼んだ。
「おーーい!!雪代ー!」
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