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「茜ー!おはよー」
「茜くんおはよ〜!」
「立花おは〜」
「おはよー!」
昨夜推しを補給した俺は、今日も元気に学校に通う。
学校までは家から歩いて40分と少し遠いが、運動は好きなので苦ではない。
登校中すれ違ったクラスメイトや友達と挨拶を交わしながら、教室を目指して歩く。
季節は4月下旬。暖かくなってきて桜はもうほとんど散ってしまい、校門をくぐると花びらの絨毯ができていた。
2年生になってクラス替えもあったけれど、皆優しいのでこうやってすれ違いざまに挨拶をしてもらえることが多い。関わったことのない知らない後輩の女の子にも名前を呼ばれたり挨拶をされることがあって、それは少し不思議に思っているけど挨拶自体はうれしいので笑顔で返している。
「あかねー!今日もモテモテだな〜」
「わ!?」
背後からいきなり抱きつくように突進されて、少しびっくりする。
振り返ると、予想通りの人物がにこにこ笑っていた。
「颯太、危ないから後ろからはやめてっていつも…」
「ごめんて、でも羨ましいぞこのこの!」
「ちょ、やめ……んっ、あははっ」
横から脇腹を擽られて、思わず吹き出してしまう。
高校に入って一番最初にできた友人である白石颯太は、お調子者の元気で明るい性格でクラスのマスコットキャラ的な存在だ。2年生でも同じクラスになれて、学校では一番一緒にいることが多いかもしれない。
「茜、今日の現文ってなんか課題あったっけ」
「えーと、単語の意味調べとプリントかな」
「うわ!やってねー!」
「やってないのはいつもでしょ」
他愛もない会話をしながら、校舎に入り教室へ向かう。
2年生になって勉強内容もレベルが上がったため、予習復習は欠かせない。推し活に支障がないように、普段からこつこつ頑張ってテストの点は維持するようにしている。
「頼む!あとで教えてくれ」
勉強は苦手では無いので、こうやって頼まれることもよくある。教えるのは自分の勉強にもなるし、頼られているようでうれしくなった。
「全然教えるけど、自分で少しは考えてね」
「よっしゃー!さすが茜!神!!さんきゅー!」
「声大きいって…!恥ずかしいから…」
颯太はいつもオーバーリアクションだから注目されることが多くて少し恥ずかしい。周りにいた生徒はクスッと笑ったり、今日もやってるよ…というような生暖かい視線を送ってくるけど悪意はないので、諦めて渋々受け止めている。
「それにしても茜、2年になってからますますモテてね?やっぱ世の中顔か!顔なのかー!」
「いやそんなことは」
「そんなことあるんだよ!普通あんな女子から挨拶されねーから」
「うーん?」
モテるとかよく分からないけど、挨拶をしてもらえることは純粋にうれしい。
些細なことでも話しかけてもらえることが、俺にとってはありがたいしとてもうれしい。
無視されるのは、何よりも辛いから。
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