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「まーいいけどさ。お前こんなモテんのに未だに彼女作んないしさー」
「……」
彼女、か。
ありがたいことに高校に入学してから何回か女の子に告白される機会はあったけど、全て丁重にお断りした。
ずっと、大好きな人がいるから。
本当は言ってしまいたかった。でもこの事実は友達、ましては颯太にも伝えられていない。
そこで黙ってしまった俺を見て、颯太は少し困ったように静かに笑った。普段明るい颯太には似合わない、何か思うところがあるような含みのある表情で少し気になる。
「この話、やめようか」
「…え?」
颯太が突然そう言い出して、少し俯いてしまっていた顔を上げる。
「あーーー進学早々課題ばっかで嫌になるよな!」
……気を使ってくれた、のかな。
不思議に思ったけど、話題を変えてくれたことに対して少しほっとした。
クラスの友達数人で話している時に恋愛やそっち方面の話題になることがある。
俺に話を振られると毎回こんな感じで少し困ってしまうけど、颯太が上手い具合に話を逸らしてくれることがある。
気のせいだと思うが、何かを察しているような感じがした。
実際、恋愛的な意味で好きな人はいない。
叶うことがない想いは、最初から捨ててしまうべきだから。
何より、これ以上嫌われたくない。
「きゃー!雪代くん……!」
様々な感情が渦巻いてもんもんとしていたところで、後ろの方から女子の甲高い奇声が響いた。
「今日は朝から学校来たんだね〜!」
「わぁ…ほんとにかっこいいー!」
「初めて生で見れたぁ…!」
その名前を聞いて思わず勢いよく振り返る。
え、今日朝から撮影だったはずじゃ……?
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