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別にどうにもならなイケオジ
日頃の運動不足解消と、交通費の節約を兼ねて、二駅手前で電車を降りて、そこから歩いて通勤することにした。
その途中で初めてすれ違った時には思わず二度見したイケオジ。
いや、「イケオジ」は失礼か。今や四十代前半なんてまだまだ「お兄さん」で通る気がするのは、自分がその歳をとっくに過ぎたからなのか。
ちょっと待て。ひと言も交わしていないのに、何を勝手に四十代と決め付けている。
身長は百七十台後半か。これは、見れば大体分かる。細身で、髪はきっちりセットしているが、服装がややカジュアルなので、会社員ではないのか。
士業かもしれないと勝手に想像してみる。バッジは着けていないような。違うのか。
翌日もすれ違った。
おっ、今日は草履ですか。なかなかおつですな。
ジャケットに草履。これは上級者のお洒落なのか。ワタシには分からない。
占い師か。いや、占い師がこんなに朝早く通勤するものなのか。
もしや、朝から開いているジムにでも行くのか。ジムにこんなジャケットを着るか。
それにしても、こんな朝早くからびしっと髪型をキメてご苦労なこっちゃ。
髪型をキメる。ジムではないな。
毎日すれ違うだけ。ほんの十秒程のことである。
知り合いたいわけではない。
名前が知りたいわけでもない。
既婚か、未婚か、離婚歴があるのか。そんなこともどうでもよい。
昨日、たまたまいつもより一本早い電車に乗ってみた。
そして、職場に向かってあの道を歩く。
あっ、イケオジ出てきた。
おっ、このタワマンに住んでんのか。
やっぱり勝ち組か。ベタに似合うな、タワマン。なんか腹立つな。
おっと、左手薬指に光るモノが。
いやぁ、遊んでんのかと思っていたら、ちゃっかり妻帯者か。
「ちゃっかり」て、なんやねん。
ヨメも美しいのか。そうであってくれ。
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