*24 蘇る記憶と痛み、そして祈り

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 結局俺は大事を取ってそのまま病院に一晩入院することになり、ひとりベッドに横たわったまま白すぎる天井を見つめていた。静かながらもそこここで足音や話声がする病院特有の空気と、何時間も泣き叫んでいたせいで寝付けないでいるからだ。  鎮静剤でさっきよりはマシになっていたけれど、罪悪感が消えたわけではない。溜め息すらつけない重たい心には、ただ鉛のようにあの言葉が刺さっている。 「――来世では……愛し合いましょう、シデーリオ様……」  前世のあの時、欲しかったはずの言葉に、俺は答えたのだろうか。ふとそんな想いが過ぎる。  最期のあの瞬間につむがれた言葉に、俺は、シデーリオは答えられたんだろうか。途切れて暗くなった視界しか浮かばず、正確なことがわからない。  でもきっと、俺は答えられていないんじゃないだろうか。答えられていたならきっと、俺はいまこんなに、彼を失うかもしれないいまが怖くて仕方ないわけがないだろうから。  もし、いままたここでオルゴーを……光輝を失ってしまったら……俺は、この先ひとりきりで生きていけるのだろうか。 「――無理だ、もう、お前なしに……生きていけないよ、光輝……」  呟いた言葉に涙が溢れ頬を伝っていく。言葉にして、いまになって自分が失いたくないものと気持ちに気づいたのだから。  俺は、光輝が好きだ。失いたくないくらいに、彼なしにもうこの先生きていけないほどに、彼が俺の人生には必要だ――この気持ちに、どうしてもっと早く気付いて、彼に伝えておかなかったんだろう。悔やみきれない想いが胸を押しつぶしそうなほど強く圧迫していく。  ベッドの上で横たわりながら、俺は普段カケラも信じていない神様とやらに手を合わせて祈る。 (――神様、どうか……いままでの罪を償うから、俺から光輝を奪わないでください……今度こそ、彼と共に生きたいんです……)  小さな人間の祈りなんて、どれくらい効果があるかしれない。でも、いま祈らないでいつ祈ると言うのだろう。たとえ俺に信心とやらがないとしても、いまこの時だけは祈るしかないのだ。  夜がこんなに長く感じたことがあっただろうか、と言うほどの長い時間を、俺は光輝の無事をひたすらに祈りながら過ごしていた。
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