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私たち夫婦には何も関係のないその日、私は学生時代の友達と久しぶりに会うと友樹に伝え、有給を取り昼から出かけた。 そして適当な買い物をし、ホテルに入ってチカを待ち伏せた。 彼女はきっと驚くはずだ。そのシュミレーションも済んでいた。私がやりたいことは、ただ一つ。もう二度と友樹に近づかせないようにすること。 チカは待ち合わせの時間どおりにホテルの部屋に入ってきた。私は防災用のスプレーを彼女の顔に浴びせ、薬品を染み込ませた布を顔に押し当て気絶させるとベッドまで運び、部屋に置いてあった鎖で拘束した。 そして手袋をして、手にした刃物をチカの右手の小指に当て、目いっぱい力をこめた。 痛みの衝撃でチカが目を覚ましたけれど目隠しをしてあるから構わない。 「ぎゃああああ!やめて!痛い!」 私は手を緩めヘリウムを吸った喉で口調を変えて答えた。 「うるせえ!赤い糸は一本なんだよ!二本も必要ねえんだよ!」 「ちょっ…何言ってんの!?意味分か……っ!ぎゃああああ!」 そして最後の一押しをした。チカは気絶している。その手に刃物を握らせると『他言したら旦那にバラす』とパソコンで印刷した紙を置いて部屋を出た。 もう約束なんてさせない。友樹の赤い糸は間違いなく私のもの。 心臓が大きな音を立てている。代わりに、ずっと鳴っていたプラスチックの音は止んだ。 心は真っ黒になっている。私は勝った。だけど、 もう裏返しても花嫁のように真っ白にはなれない。 私は、一生、黒なんだ。
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