6人が本棚に入れています
本棚に追加
執筆密密裏話〜バニラ編〜
折角なので、『バニラの海になる』の作成話でもしようかなと思います。
第二回あたらよ文学賞のテーマが『青』ということで、『青』と言ったら自分のなかで「ゴッホの青」なのでこれを主軸に作っていこうというのは初期の段階から考えていました。
実は最初は今とはまったく違い、ゴッホの色彩の魅力に取りつかれた主人公が世界で一番純粋な青を表現すべく青という色彩にのまれて破滅していく、というストーリーを描いていました。でもプロットの段階でつまんねえなと思い、締め切り一週間前で路線変更しました。
そもそもゴッホの青を文章で表現するためには作者がゴッホの青を体感・表現できなきゃと思い、ゴッホの『ローヌ川の星月夜』を描くためにアート教室に行って、それが締め切り二週間前だったので、その後でさらに一からプロットを書き直したので、一週間寝る間も食べる間も惜しんで書き上げました。
恋愛ものにしようと思ったのは「青」という色がどんなイメージや表現を持っているかを考えたとき、須田景凪(バルーン)さんの『メロウ』という曲の「青い温度の正体が恋だとしたら」という歌詞からインスピレーションをいただき、青い恋愛を書こうと思いました。
「世界で一番純粋な青」という言葉(キャッチコピー)は絶対に入れたかったので、ゴッホの青と恋模様が重なるようなラストにしたいなと思っていました。
失恋をテーマにしたのは、私が恋愛未経験であり、恋愛小説や少女漫画もどちらかと言えば苦手な部類で、リアルな恋愛が書けないからです。それと恋愛における起承転結の結のパートをめちゃくちゃ詳細に書いてみたく、恋が終わる過程のなかで生まれる心情や生活を鮮明に描いてみたかったからです。
失恋を書く上で参考にしたのは映画『花束みたいな恋をした』とずっと真夜中でいいのに。の『ばかじゃないのに』という曲です。恋愛が未経験なら失恋も未経験なので、この手の参考資料がないと想像だけでは書けません。
講評で「洒落た都会の大人の恋愛」といただきましたが、都会を設定したは土岐麻子さんの『NEON FISH』という曲から影響を受け、ネオン街の情景描写を書きたかったからです。ちなみに舞台は隅田川沿い(押上や浅草、蔵前辺り)のつもりで書いてます。表紙が東京スカイツリーなのはそういうことです。
年齢設定を大学生にしたのも、ちょっと遊んでる大人の恋愛と匂わせ程度の性行為描写が書きたかったからです。高校生は作者の倫理観から性行為書けないし(一応商業の公募だし)、社会人は恋に対するしがらみ(仕事とか時間とか)が多い。大学生なら時間も金もある程度あるし、性行為書けるしと思って設定しました。倦怠期特有のぬるま湯加減も二十代前半が一番丁度いいのかなとも思います。
倦怠期のなかで葛藤や未練を抱えている主人公の退廃的な生活も作中で描きたいなと思っていました。というのも執筆中に退廃文学書きたい欲があり、テーマの『青』ともかけて村上龍さんの『限りなく透明に近いブルー』を読んでいた影響もあります。
作中に登場するクリームソーダも重要なマクガフィンです。元々、私が青のクリームソーダが好きで登場させたいと思っていました。ちなみに二人の行きつけの喫茶店は神保町にある「さぼうる」というクリームソーダでめっちゃ有名な喫茶店です。
最初のコメントを投稿しよう!