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雷に当たってから文章変わりました
今だから言える話ですが、恥ずかしさを飼い慣らしたての頃は承認欲求の塊でした。
読んでください。スターください。レビュー書いてください。
まったく筆力もない癖に恥ずかしいったらこのうえない。。自己愛が強くて無駄にプライドだけは高い。今でも自分の嫌いなところです。
しかし、他人からの評価なぞどうでもいいと思えるような出会いがありました。この出会いから自分がどんな小説を書きたいかが明確になったし、読者数もスター数も気にならなくなりました。
それは一冊の天文随筆でした。本屋をうろうろしていた時に装丁に惹かれ、当時から星や星座が好きで偶然手にとった本でした。そして読んでみて雷に打たれました。文章がとてつもなく美しかったのです。今まで見たことないくらいに。
それまで文章にはあまりこだわりがありませんでした。小説も文章<ストーリー重視だったので。しかし、この本を読んで「これだ!」と思いました。なかでも自分が一番に衝撃を受けた文章がこちら。
「しわしわと古蚊帳に寄る波から、朝涼の森に銀鈴を振る蜩の音から、日本の秋は立つ。」
ヒョエエエエエぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーー!!!!!!!!!!!
まさに青天の霹靂でした。何度も読んでもこの一文の美しさの衝撃は忘れられません。
秋は「立つ」だぜ!? 「なる」じゃなくて「立つ」!! 今時こんな表現使う人間いる!? いねえよなぁ!!?
しかも何から「立つ」か。古蚊帳に寄る波。朝涼の森に銀鈴を振る蜩の音。
おっ洒落っ!! 「朝涼の森に銀鈴を振る」ってこんなの随筆でしか書けない表現。うーん、絶品。
他にも雷どころか、隕石級の衝撃に打たれた文章表現が多々あります。全部紹介したいですが、これは実際に自分の手で頁を捲って見てほしい…! その本がこちら↓
野尻抱影『星は周る』
野尻抱影さんとは、日本の英文学者・随筆家・天文民俗学者で、「冥王星」の名付け親でもあります。古今東西の星座・星名を調べ、特に星の和名の収集研究で知られています。天文ファンの間では「星の抱影」と呼ばれ親しまれている方です。
明治〜昭和を生きた方でその時代背景をか持ち出しつつ、夜の空気感や抱影先生(リスペクトを込めて勝手に「先生」と呼んでいます)の星空を慈しむ心が軽妙洒脱な筆致で書かれ、「どんな感性持ってたらこんな文章書けるんですか!?」と後頭部をぶん殴られ続ける思いでした。
これをきっかけに「こんな文章が書きたい!」と思うようになりました。この衝撃の出会いを経て最初に書いたのが、『光る魚と虹色の雨』です。
この作品とそれ以前の作品では文章や描写の感じや作風が違うことわかりますかね? それ以前から星や月は作品のなかに出てきてはいましたが、『星は周る』を読んで星空の情景描写を書きたいと思いました。プラネタリウムの脚本みたいに星空解説なんかも加えて。
そして公開したらあらびっくり、当時過去一番のスター数をいただきました。特にペコメやレビューで文章と描写を褒められた時なんかは宇宙まで飛んでって自ら隕石に当たりに行きたい気分でした。ありがとう抱影先生。
これ以降、文章力(特に情景描写)を磨くようになりました。ストーリーの面白さとかスター数とかそっちのけで。その甲斐あって、よく文章や情景描写を褒められます。なんの実績もない私が5年間(正確には3年半)磨いてきたのがこれです。
なので次の章からは文章や情景描写の書き方や意識していることを語りたいと思います。
ではまた次回〜!
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