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絶対秘密のアッコちゃん
「絶対に秘密だよ」
突然の暗黒。後ろから手で、目隠しをされた。小さな手だ。耳元で囁かれた声も幾分幼い声。
「誰?」
私は、カフェのテラス席に座って彼を待っていたが、この手、この声、健ちゃんじゃない。どうすればいい?
「明日、小惑星が地球に衝突して、人類は滅亡しちゃいます。各務原 あつ子さん。あなたは選ばれました! 人類救出計画で、地球脱出用の巨大宇宙船に乗る権利を得ました!」
弾んだ声の説明が終わると、目を塞いでいる手がなくなった。私は、座ったまま振り向く。
「あれ?」
誰もいない……。顔をテーブル側に戻すと、対面に座っていた。おかっぱ頭でスーツを着た少年……というより子どもだ。小学校3年生ぐらいかな。4月だから入学式帰りだろうか。ほっぺが真っ赤で、ニタッと笑う顔。前歯が2本欠けている。
「今、各務原あつ子さんが聞いたことは、絶対秘密ですよ。マジですから」
その声は、確かに目隠しの声だ。その子は、わざとらしく人差し指を唇に当てる。
「いや、君が言っていることの意味が分かんないし。そもそも君は誰?」
私は、コーヒーカップをどけて、テーブル越しにその子に近づく。
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