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七
律儀者の虎見からは、毎日子宝に恵まれる茸や山菜が届いた。
江戸屋敷では料理人が腕を振るい、毎日のように珍しい料理を楽しむことができた。
「ありがたきこと」と、伽椰子は忠順に言う。
茸の効能もあっただろうか。
伽椰子の腹がふっくらとしてきた。
医師からも「おめでた」だと診断され、江戸屋敷は喜びに包まれた。
「これほどの効能がある茸とは、思わなんだ」
忠順は伽椰子の腹を撫でながら言った。
「殿、虎見殿にお礼の文を書いてはいかがでしょう」
微笑んで伽椰子が言う。
「うむ、そうだな。妊娠に良い山菜を送ってくれるやも知らぬし。子を授かったのも虎見のおかげだしな。早速書いて送るか」
早馬で藩主の忠順からの文を受け取った虎見は、すわ、一大事が起こったかと青ざめた。
送った茸に毒でも混じっていたか。
いや、念入りに幾度も確認している。
そんな筈はない。
逸る心を抑え、開封して文を読んだ虎見の顔に笑みが溢れた。
妻の雪乃に直ぐに伝えに行く。
殿からの粉薬が効いているのか、雪乃の咳は収まり、近頃は起きて軽い家事ができるようになるまで回復を見せた。
虎見からおめでたい報せを聞いた雪乃は、口元を手で覆い、喜びの涙を浮かべた。
「虎見様、ようございましたね。虎見様の努力も報われましたね」
夫婦は抱きしめあって喜んだ。
「明日からは滋養のあるものをお送りしよう」
「お優しい殿のおかげで私も生きながらえております。いつか……いつかお礼など申し上げられる機会があるとよろしいですわね」
雪乃の言葉に、虎見が大きく頷いた。
後、数月で殿が江戸から戻って来られる。
その後で上司とともに殿にお礼を申し上げたい。
お子を授かったお祝いもできることだろう。
虎見と雪乃は微笑みあい、翌日に送るための忠順への献上品を丁寧に包み始めた。
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