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1.朝礼
校長先生のお話。
「みなさん、おはこんばんにちわ。今日はわが校名物、エイプリルフール記念A-1グランプリです。この行事に参加したくて本校に入学した生徒も少なくないと聞いています」
2年生の七原が彼女の典子に訊く。
「おい、ホントか?」
「そんなバカはいないわ。嘘つきごっこはもう始まってるのよ」
「こほん。心して聴いてください。今日はみなさんにコロ、もとい嘘つき合いをしてもらいます」
すかさず3年生の怒号が飛ぶ。
「どういうつもりだ!」
「ひどい! わたしたちの人権を無視してるじゃない!」
言うまでもなく、掛け声は仕込みで、3年生で脈々と受け継がれた伝統芸である。校門脇に何とか大会出場と個人情報を晒されている者たちが春休み前に校長室に招かれ、上等なスイーツを振る舞われながら依頼されるらしい。上等なスイーツというものに十数年来お目に掛かっていない筆者には描写できないのが悔やまれてならない。
校長はにこにこしながらみんなを制するように手を広げ、
「まあまあ、みなさんのお気持ちはわかります。そこで今回はわが校の持続可能な発展のために先生方に中心になってもらうことにしました」と宣う。
「と言いますと?」
誰だよ、オンラインショッピングかよ。七原はつぶやく。
「授業自体がA-1なんです! 先生たちによる真っ赤な嘘、嘘っぱち授業です!」
「それはすごい!」
すごいのか? 嘘授業で間違って覚えたりしないか? 文科省から叱られないか?
「新しい!」
新しいからいいってもんでもないだろに。
「質問いいですか?!」
「いいですよ。川田君だったかな」
「はい。2年B組の川田です。グランプリの優勝者はどうやって決めるんでしょうか?」
「それは……」
それは?
「終礼までに考えておきます」
はらひれほれ~♪ 壇上の教師たちがおおげさかつ無理やりにずっこけた。吉本の伝統芸か!
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