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第5話 観覧車
† † †
アリスを捜して、もうどれくらい遊園地を歩き回っただろう。
アレンがため息をついたそのとき、夜空に浮遊している何かが目に入った。
ハートの形をした真っ赤な風船だった。
風船がたった一つ、夜空でゆらゆらと揺れて浮かんでいる。
もしかして、アリスのものかもしれない。近くにアリスがいるのか。
そう考えたアレンは、風船の真下のほうに向かって走り出した。
しかし、たどり着いた場所にアリスはいなかった。
視線を落とすと、遠くのアスファルトの上に何かが落ちていることに気づいた。
アレンは、落ちているものに近づいた。
それはカラフルなプレゼントボックスだった。ピンクの下地に、黄色のリボンが優雅に巻きつけられている。プレゼントボックスの重さは、サイズのわりにほとんどない。
おそらくフェアリーランドの景品だろう。客の誰かが落としたものなのかもしれない。
しかし、周囲に持ち主らしき人はいなかった。スタッフに落とし物を届けようと思ったが、受付は無人だ。
アレンは頭を悩ませた。
よく見ると、黄色のリボンの下には、紙が挟まっている。
アレンは、その紙を取って、まじまじと表面を見てみた。
「開けて」と、その紙には書かれていた。
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