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アリスはうつむいた。
アリスの脳裏に、エリカとの初めての出会いがよみがえる。アレンと喧嘩したあと、夕暮れの広場で涙を流す自分に、そっとハンカチを差し出してくれた。初めて自分の悩みを話せたのがエリカだった。
そのエリカもまた、同じように悩みを抱えていた。お母さんが亡くなり、エリカはたった一人、お父さんを捜してここに来た。しかし結局会うことはできなかった。
アリスはエリカに助けられてばかりで、何も恩返しすることはできなかった。そしてそのままエリカを置いて先に帰ろうとしている。
遊園地から脱出する準備は整っていた。しかし、エリカを置き去りにして一人で脱出するなど、アリスにはできなかった。
「……家族のことあんなに話せた人はいなかった。
エリカは、たった一人の家族のパパを探してたの。
なのにわたし、自分のことばかりで何もしてあげられなかった……。
エリカと、もう二度と会えなくなっちゃうかもしれない。
エリカは、わたしの大切な友達。
見捨てることなんてできない……!」
言葉を絞り出したアリスは、アレンの手を振り払い、走り出そうとした。
しかし再びアリスの手をアレンが掴む。何度振り払おうと、アレンは手を離してはくれなかった。必死に抵抗するアリスの髪が大きく乱れ、叫び声が夜空に響き渡った。
「離して!」
「アリス、早くここから出るぞ」
「待って!」
「待てない! 今帰らないなら、今度ばかりは本当に置いてくぞ!」
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