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アレンの携帯の着信音が鳴った。
アリスは思わず「最悪」と口にしていた。電話の相手が誰なのかは、アレンが確認するまでもなくわかっていた。
運転しながら、スマートフォンの画面を確認したアレンは、
「母さんから。出るからな」
とアリスに確認を取ってから、片手でスマートフォンを耳に当てて通話を始めた。
「もしもし、俺」
「アレン、今どこ?」
電話口から、アリスが今一番聞きたくもないお母さんの声がした。思わず耳をふさぎたくなる。
「今は……」
アレンは横目でアリスを見つめる。そして、
「今は、商店街。商店街を探してる」
と適当にごまかした。
お母さんの動揺の声が聞こえる。
「じゃあ、まだアリスは見つかってないの?」
「うん」
「ちゃんと探したの? ほら、アリスがよく行くお店とかは行った?」
「全部探したよ。でもどこにもアリスはいなくって」
「そうなのね……」
お母さんの口ぶりは深刻そうだった。それを聞いて、アリスはそれまで聞きたくないと思っていたお母さんが自分を気にかける声を、もう少しだけ聞いていたくなった。
「今月で三回目……あの子の家出。どうしちゃったのかしら……」
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