第4話 コーヒーカップ

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 一人取り残されたエリカは、アリスの背中を見つめた。  エリカは、右手にあるアリスからもらった写真を思い出した。  そろそろポラロイドカメラで撮った写真が乾いている頃合いだろう。  エリカは、二枚の写真を見つめる。写真は両方ともきれいに現像されていた。遊園地の夜景が鮮明に浮かび上がっている。  エリカは、自分自身が写った一枚目の写真に目を向けた。写真の中のエリカの姿は、写りがはっきりとしておらず、悲しくなって写真を裏返した。  エリカは、アリスが写った写真を見た。写真の中でアリスは、にこやかな表情で、ウサギの等身大パネルの前でピースをしている。  しかし、エリカは写真の中の違和感に気づいた。目を凝らし、写真をよく見る。  エリカは、言葉を失った。急に周りから音が消えた感覚に襲われる。  アリスの首筋、肩、腕に、アリスのものではない真っ白な八本の手が写り込んでいた。その手は、まるでアリスに呪いをかけるように、背後から掴みかかっている。  エリカは、その手が何なのかわかって、思わずぞっとした。  そう、あれは、マリオネットを操っていた四人の手だった。
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