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両親の離婚。
それはまるで、突然空から降ってきた雷のようなものだった。
アリスは、裁判という大人の世界はまだ理解できない。ただ、両親の離婚裁判の経緯を追っているうちに、なんとなくわかってきた。
それは、喧嘩した次の日には仲直りできる子供の世界とは違う。大人はどんなことでも公の場で争いの決着をつける。
そう、家族の関係でさえ。
なぜ、家族の愛に関わることでさえも、そんな冷たく堅苦しい手続きが必要なのだろう。
裁判の結果、アリスとアレンの日常は根底から変わってしまった。
アリスはお母さんと共に、アレンはお父さんと共に暮らすことが決まったのだ。
この事実は、もう変えられない。
アレンがそばにいない日々を想像するだけで、本当は寂しさが込み上げてくる。
お母さんとの電話が終わると、アレンはアリスを見た。
「母さん、相当心配してる。これ以上はもう付き合えない。そろそろ帰ろう」
「まだ帰らないで」
「どこまで行ったら気が変わるんだ? いつもならそろそろ気が変わる頃合いなのに、今日はずいぶんと頑固だな」
アリスはむっとして返事をしなかった。
「何とか言えよ」
アリスは窓の外の景色に視線を投げて、やはり返事をしなかった。
「……アリス、わかってるだろ。明日からはもうこんなことできない。アリスの家出に付き合ってくれる人はいない」
アリスは答えられなかった。これからのことなど、何も考えていない。
今はただ、アレンと兄妹でいられる時間がずっと続けばいいと思っているだけだった。
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