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しかしそんなアリスの甘えを、アレンは許してはくれなかった。
「アリス、冷静にもう一度考えてくれ。明日から一人で母さんと向き合うことになるんだ。
……明日から俺たちは……もう兄妹じゃないんだぞ」
アレンのその一言が、一番聞きたくない言葉だった。
現実を突きつけたアレンは、さらに強い言葉で続ける。
「一度母さんに謝れば済むことだ」
「謝る……? なんでわたしが? わたしは悪くないもん。悪いのはいつもいつもお母さんだもん」
「一度くらい何だっていうんだ。これからの人生母さんと二人でどうやっていくつもりなんだ? 一生喧嘩してるつもりか?」
「それも悪くないかも」
「アリス……」
アリスはため息をついて、そしてあきらめたようにそっぽを向いてつぶやいた。
「……アレンは、何もわかってくれない。わたしの言うことくらい聞いてよ。今日が一緒に暮らせる最後の日なんでしょ……。最後くらいは、わたしの言うこと聞いてよ……」
数時間に及ぶドライブの中で、初めて口から本音が出た。
さっきまでとは違うアリスの声に、アレンは同情したのだろうか、しばらく間をおいてから言った。
「……最後だ」
アリスは何も考えずに、口に任せて言った。
「……海が見たい」
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