第1話 アリスとアレン

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 しかしそんなアリスの甘えを、アレンは許してはくれなかった。 「アリス、冷静にもう一度考えてくれ。明日から一人で母さんと向き合うことになるんだ。 ……明日から俺たちは……もう兄妹じゃないんだぞ」  アレンのその一言が、一番聞きたくない言葉だった。  現実を突きつけたアレンは、さらに強い言葉で続ける。 「一度母さんに謝れば済むことだ」 「謝る……? なんでわたしが? わたしは悪くないもん。悪いのはいつもいつもお母さんだもん」 「一度くらい何だっていうんだ。これからの人生母さんと二人でどうやっていくつもりなんだ? 一生喧嘩してるつもりか?」 「それも悪くないかも」 「アリス……」  アリスはため息をついて、そしてあきらめたようにそっぽを向いてつぶやいた。 「……アレンは、何もわかってくれない。わたしの言うことくらい聞いてよ。今日が一緒に暮らせる最後の日なんでしょ……。最後くらいは、わたしの言うこと聞いてよ……」  数時間に及ぶドライブの中で、初めて口から本音が出た。  さっきまでとは違うアリスの声に、アレンは同情したのだろうか、しばらく間をおいてから言った。 「……最後だ」  アリスは何も考えずに、口に任せて言った。 「……海が見たい」 a82fa21d-a63c-4e21-ad39-c46288b7d8a7
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