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また呼び出し①
「やあ、アリカ嬢。指の様子はどう? 」
パーティーのことでお礼を言われて以来、ルシオン王子は学園でアリカと会うと、声をかけてくるようになった。
「ごきげんよう、ルシオン王子殿下。はい、あれからすっかり良くなりました。ありがとうございました」
指は痛かったけど、王子とお近づきになれた。
このまま玉の輿を狙えるといいな。
などと思っている時、アリカの鞄に見慣れない封筒が入っているのが目についた。
封を開けて読んでみると…
「アリカ・アンセリウム殿
放課後、学園裏の森の入り口で待つ
リオス・リムラント
スカビオ・ストカーサ 」
なっ、何これ!? まるで果たし状?
私、何かした???
「エルセ、どうしよう」
「心配しないで。私たちもついていくわ。ね、エキーザ兄さま」
「ああ。仮にも公爵家のご令息だし、王子の側近だ。変なことはしないだろう」
「そ、そうね。私もアキレオ兄さまと一緒に習った、剣や体術の心得もあるし」
「アリカ、さすがに学園内で、そんなことにはならないと思うよ…」
放課後、3人で指定の場所へ向かうと、リオス様とスカビオ様が待っていた。
「アリカ嬢と…、そちらの2人は? 」
リオス様が尋ねてきた。
「アリカ嬢の友人の、エキーザ・エピデンドです。こちらは妹のエルセ。さすがにアリカ嬢1人で、おふたりにお会いするのはどうかと思いましたので、同行いたしました」
「仰る通り、不躾だったことは申し分けない。ただ、私たちはけしてアリカ嬢に危害を加えたりはしない」
「もちろんでございます。では、私たちは少し離れたところで、お待ちすることにします。行こう、エルセ」
エルセとエキーザは、アリカから少し離れたところまで下がった。
「アリカ嬢、先日のことだが、まさかすべて、君が仕組んだということはないだろうね」
グレーの髪を風にたなびかせながら、スカビオ様が、穏やかな声で穏やかでないことを言ってきた。
「先日のこと、とは…?」
「パーティーでの“偶然”の事故のことだよ。君がルシオン王子に近づくために、あのご令嬢にわざと転ぶように指示したということはないか? 」
「なっ…! 」
「ルシオン様は普段から、多発する“偶然”にお疲れでいらっしゃる。
あのパーティでのことは、単純に君の心からの行動だと思われてていて、礼までしたが、もし君がすべてを最初から、何か魂胆があったとなれば、放っておくわけにはいかない」
なな…、なんということを…。
アリカは再びさっと手を挙げた。
スカビオ様とリオス様は、一瞬くっと笑いをこらえた。
「どうぞ、アリカ嬢」
「お言葉ですが、私は、下心を持った行動っていうのが、大の苦手なんです!!!」
ふんっ! つい鼻息が荒くなってしまったわ。一応、男爵令嬢なのに…。
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