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また呼び出し②
スカビオ様とリオス様は、顔を見合わせた。
「…では、アリカ嬢には、ルシオン様に近づこうとする下心はまったくない、と?」
「あ、違います。下心はあります。正直、王子殿下とお近づきになりたくて、猛勉強してこの学園に入りました」
「何? じゃあ、お前やっぱり…」
リオス様がすごんできた。
「下心はありますけど、そのために“偶然”本を落とすとか、“偶然”転ぶとか、そういうわざとらしい行動はできないんです」
リオス様とスカビオ様は、顔を見合わせた
「…下心はあるけど、下心ある行動はできない? …ってことは、自分ではできないけど、人に指示をすることは、できるってことか? 」
「自分の下心のために、人にわざとらしく転ぶ指示をするなんて面倒くさいこと、やってられませんよ」
アリカは、はぁっと呆れたようにため息をつきながら言った。
「大体ですね…、あっ、発言してもよろしいでしょうか?」
アリカはまたさっと手を挙げた。
「身分を気にせず普通に会話していい」
スカビオ様が答えた。
「ありがとうございます。えっと、大体ですね、下心がない人間なんているんですか? あの人と近づきたいとか、こうなりたいからこうするとか、人は何かしら下心みたいなのを持ってるんじゃないですか? 」
リオス様とスカビオ様は、再び顔を見合わせた。
「ご令嬢たちも、殿下とお近づきになりたいっていう下心のために、アレコレ頑張って“偶然”を発生させてると思えば、いじらしくて可愛いじゃないですか」
「まあ…、言われてみればそうか…」
「確かにそうかもしれない…。しかし、あまりに下心ある行動は、嫌らしくないか? ましてそれが多発しているとなれば」
すると今度はアリカがうーんと考え込んだ。
「…確かにそうですね。ハッキリ言わないで、わざとらしい行動ばかりしているのは嫌らしいかもしれないですね。そうか、それならハッキリ言えばいいんですね! 」
「まあ、そうかもしれないな。ハッキリ言ってもらえれば、どういう意図かわかるからな」
「ハッキリ言ってしまったら、それはすでに下心ではないのでは? 」
納得したように話すリオス様に、スカビオ様がつっこんだ。
「じゃあやはり、下心ある行動は嫌らしいということになるのか…」
「ハッキリ言ったら、ハッキリ断られるかもしれないから、それが怖いのかもしれません」
「そうか。じわじわと自然に近づいていきたいのか」
「自然に近づきたい下心があるのなら、それは自然とは言えないのでは? 」
またまたリオス様に、スカビオ様が突っ込んだ。
今度は3人で、うーんと考え込んだ。
「まあ、とにかく、アリカ嬢には、わざとらしい“偶然”の行動はできないということだな」
「そうだな。こいつにはできないだろう」
スカビオ様がまとめたことに、リオス様が付け足した。
なんかちょっと馬鹿にされた感もあるけど、私にはできない、ってことは分かってもらえたらしい。
「まあ、あのパーティ―依頼、“偶然”は減ってるしな。わかった、アリカ嬢、手間をとらせたな」
「いえ。お分かりいただけたようで何よりです。では失礼いたします」
アリカはお辞儀して、エルセとエキーザのところへ戻っていった。
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