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Ⅱ c
半世紀前
この世界は
日が昇らない夜の世界だった
年中 雪が降り積もり
白銀の世界のこの街で
僕はひっそりと両親と
生活を送っていた
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50年前 20歳 ロウス
鍛冶屋を営む老夫婦の元で
僕は育った
僕は老夫婦の実の子ではない
捨て子だった僕を
子がいない老夫婦が
僕を引き取ったらしい
僕が捨てられていた状況等を
聞いても詳しくは
教えてはくれなかった
次第に
この話題になると
口を重く閉ざしてしまう様になった
この話題は
タブーなのだと僕は察し
質問する事 事態を止めた
僕はこの2人の息子
僕をこの2人の息子
僕はこの2人の息子
そう自分に言い聞かせた
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大雪が降る寒い日の事
小さいランプに火を灯し
僕達 3人はテーブルを囲んで
食事を摂っていた
急に父が真剣な面持ちで
お願いをしてきた
「ロウス、お使いを頼みたいのだが」
珍しい
こんな大雪な日に
僕に頼む事をするなんて
「良いですが、珍しいですね
大切な物ですか?」
「申し訳ないな、こんな天気なのに…」
父は立ち上がり
小さな小物入れから
白い布に包まれた 小箱サイズの物を取り出し
僕に手渡した
「これを、お城の人に渡すんだ」
父が差し出して来た物を
僕は受け取ると
小さく頷いた
「かしこまりました
きちんとお届け致します」
僕は父にそう告げた
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