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ふたり分の水着を買った島最大のショッピングモールで晩ご飯を食べてから帰宅し、入浴と歯磨きを済ませた。
あとは眠るだけという段階になり、俺はリビングの畳スペースに無造作に置いたエコバッグに視線をやる。そこには買った水着が入ったままになっている。
「真也くん、何してるの? まだ寝ないの?」
「あ……。寝てもいいんだけど……」
買ったばかりの水着。香織さんが試着した姿が見たくてたまらない。
「そう。なら、早く寝室に行こうよ。リビング、エアコン消しちゃったし」
香織さんが電気のスイッチに手をかけたのを見て、俺は慌てて言葉を発した。
「か、香織さん。水着……試着しないと」
「え? いいよ。ちゃんとサイズ確かめたし」
「でも……。ほら、毛とか……はみ出てたらだめじゃん」
「あっ……。それは嫌」
普段、風呂などで香織さんの生まれたままの姿を見ているだけに、その心配はおそらくない。だが苦し紛れに口にした言葉が香織さんをその気にさせたのなら、それ以上のことはない。
「でも、それを言うなら、真也くんも試着しないとだめよ」
「え、俺はいいよ」
「だーめ」
香織さんはエコバッグから俺の海パンを取り出してぐいっと突き出した。
「普通のパンツよりもぴたっとしてて、穿きにくいと思う。だから、スムーズに穿く練習をしておくべきよ」
「はぁい……」
そう言われたら従わざるを得ない。下半身を動かすことのできない俺にとって、パンツやズボンの着脱はいまだに重労働だからだ。
結局俺は寝室のベッドで、香織さんはリビングで着替えることになった。
寝室に行く間際、俺は一縷の望みを込めて香織さんに念を押した。
「着替えたら、そのままのかっこうで寝室に来てほしい」
「じゃあ、真也くんもそのままでベッドにいて」
「は、はい」
俺は何だかすごくどきまぎしながら、ハンドリムを回した。
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