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バラバラ……と、大粒の雨が傘を叩き付ける。
紫色の傘に蜘蛛の巣をあしらった、オシャレでダークな、ホラーテイストの傘は、蓮に良く合っていて人目を惹く。
繁華街の道には、所々水溜まりが出来ていて、ピチャンと跳ね上がる。
「穏さん……もう、帰ってるよね……」
待ち合わせをしていた訳じゃないが、ただ、何となく、繁華街の外れに、古びたピアノが置いて在る廃墟となった場所を思い出し、蓮は導かれる様に歩き出す。
その場所は、行った事など一度もなく、噂程度にしか聞いた事しかなく、初めて行く場所にも関わらず、蓮は迷わず進む。
すると⎯⎯僅かに照すネオンに照されて⎯⎯。
雨に打たれ、全身びしょ濡れの穏が両膝を付いた状態で、天を仰ぐ姿が見える。
「!?Σ穏さん!!」
慌てて駆け寄り、穏に傘を指し出すと、悲痛そうな表情で笑う穏。
「……あ…蓮、くん……」
海の様な青い瞳からは、雨の雫に混じって、涙を流している。
「来て…くれたんや………」
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