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とある喫茶店で、降り頻る雨を茫然と見上げながら、雨音を聴く様に目を閉じる。
激しく地面を叩き付ける雨音は……まるで激しく掻き鳴らすドラムの様で、その度に思い出すのが、仲の良い先輩……穏の事。
幾度と無く体を重ね合わせ、愛を語り合ってきた……筈だった……。
だけどその度に、蓮の心を罪悪感が襲い、胸を締め付ける。
どんなに愛を語っても……どんなに体を重ね合わせても……後に残るのは、虚しさと罪悪感……。
相手は先輩で、しかも男性だ……。
こんな荒んだ恋愛……神様だって、許さないだろう……。
もう、終わりにしよう……。
歪んだ、この恋愛を……。
こんな報われない恋なんて、するべきじゃなかった……。
『好き』だったとしても、『愛』してたとしても……この恋は終わらせるべきなんだと……。
「蓮くん」
愛おしそうに、いつも優しい声で、優しい表情で、明るく暖かな笑顔で接してくれた……。
あの人の、あの笑顔が大好きだ……。
「蓮くん」
そう呼んでくれるだけで、幸せだった……。
ふと、空を見ると…霧が立ち込めた様に真っ白で、先程よりも雨足が強くなっている。
「帰ろう……」
会計を済ませて、傘立てに有る傘を指し、来た道を戻って帰路を行く。
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