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 一方、店内ではお世辞にもガラの良いとは言えない先客の(種族の入り混じった)男達が人目を気にしない笑い声を上げ騒いでいた。しかし開いたドアからそんな事を気にも留めない足音が入って来ると、店内の騒々しさは瞬く間に締まりゆくドアから外へと消えていった。  先程までが嘘のようにすっかり音の砂漠と化した店内。そこへ響くのは微かに流れる優しい音楽と二人分の足音だけ。そんな音へ四方八方から集まる視線は歓迎的とは言えず警戒すべきモノだったが、二人は立ち止まる様子もなければ周りを気に掛ける様子もない。  そしてドアから真っすぐ進んだ二人はそのままカウンター席へ並んで腰掛けた。 「ビールを。そして彼女には――」  そんなハット帽の男性の声を遮り、一人の大柄な男が隣の女性へと近づく。 「中々イイ女じゃねーか。奢ってやるからあっちで一緒に呑めよ」  しかし表情の無い凛々しい容貌は聞こえないと言うように前を向いたまま。  そんな彼女に筋骨隆々としたその男は「フッ」と笑いを零した。 「気のつえぇ女は嫌いじゃねぇ。いや、むしろ気に入ったぜ」  するとまるで無言で警告する様に女性は手に持っていた刀をテーブルの上に置いた。 「おっと。こえぇーな。武器なんか持ってやがる」  そんなわざとらしい声に他の席に座る他の男達の笑声が店内へと響いた。
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