新天地

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 引っ越し当日。時間通り9時に業者がやってきて、テキパキと荷物を運び出す。僕は大家さんにお礼を言って、鍵を返却。引っ越し業者と一緒に、新居へと向かった。  見慣れた町が車窓越しに過ぎていく。感慨深いものは、ない。それよりもこれからの生活のことで頭がいっぱいだったし、そもそもほぼ引きこもりの生活だったのだ。どちらかと言えば、そこから早く抜け出したかった。  車に揺られること30分で新居に到着。今回のアパートは木造ではなく、鉄筋コンクリート。それだけでも、かなり進歩した気がする。  玄関の扉を開けて、改めて部屋を見渡す。目の前にリビングがあり、その隣に8畳の部屋が一間。今までが6畳一間だったから、すごく広く感じる。  荷物を入れる業者にあれこれ指示しながら、1時間ほどで全ての荷物を入れ終わり、業者は去って行った。  さて、どうするかな?  ひとまずお湯を沸かして、インスタントコーヒーを淹れた。今までの僕なら荷物の紐を解くことなくゲームに向かっていただろう。でも、今は違う。っていうか、肝心のゲームがない。売っちゃったから。  コーヒーを飲み終えた僕は段ボールから服や日用品を取り出し、整理を始めた。僕にしては上出来だ。
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