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Toki屋
時計屋の前を通り過ぎると、小さな陶器の並ぶ店があった。猪口に湯呑、小皿に茶碗。どれも家庭的で、派手さはないものの、存在感があった。
そういえば、こういうの好きだったな。
この6年間、ゲーム三昧で頭は現実世界から離れていた。小さな陶器たちを見ていると、昔、こういうものを見るのが好きだったことを思い出した。
勇気を振り絞って店の扉を開けた。カランコロンとドアベルが乾いた音を響かせる。店の中には誰もいなかった。
入口から見渡せる程度の狭い店内を、1歩1歩慎重に進む。中には所狭しと数々の陶器が並べられている。
「えっ、お客さん?」
20代後半と思われる女性が奥の部屋から顔を覗かせている。どう見てもお客さんだろ?僕はそう思いながら、軽く会釈した。
「いや、ウチなんてほとんどお客さん来ないからさ。しかも平日の昼間なんかに」
女の店主はあっけらかんと言った。僕はそれを無視して、不規則に並べられた陶器たちを見て回った。
形は歪だけど、どれも素敵だった。手に取るとでこぼこの表面が手になじみ、温かさを感じた。僕は夢中で店内の陶器たちを見つめた。
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