辺境の地への派遣

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辺境の地への派遣

ミリーと会った日の翌日。 王宮から呼び出しを食らった。 「…ちっ。今更何の用なんだか…」 呼び出し状をデスクに投げ、私はドカッと椅子に座る。 くだらない仕事を受けている場合ではないのに。 明後日は孤児院慰問の日。 つまりミリーと会う日だ。帰りにお茶でも誘って、仲を深める為の作戦を考えていたいのに。 仕方ない。さっさと済ませよう。 王宮に向かう伝令を送り、私自身も支度を整えて出発する。 その時はまだ明後日にはミリーと会って、その後にデートする気でいた。 ◇◇◇◇◇◇◇ 「突然のお召し出し、誠に恐悦至極にございます」 感謝の欠けらも無い挨拶を一応行う。 目の前には、皇太子、宰相、宰相補佐官が座っている。 案内されたのは、皇太子の自室だった。 「…わざとらしい挨拶は良いから、ランガス。何をそんなに怒っているのだ?」 皇太子が溜息をつきながら此方を見て言った。 「…いえ、私は子爵。殿下のお目通りをするには身分が違いすぎるかと。」 「…この前まで、王宮騎士団の総司令官だったのに?」 皇太子の横で宰相が笑っている。実はこの宰相閣下。我が父である。そして横の宰相補佐官は弟だ。 まさか単なる談話の為に、ここに呼びつけたのではないだろうな? イラッとして3人を私は睨みつける。 「…お前の総司令官の席…まだ埋まってないが?戻っても良いぞ?」 「…結構です。私には荷が重いです。勿論補佐官も。」 早く話を終わらせたい私は話に出そうな事を先に口にして潰しておく。 「…それだよ。全く…君にはしてやられたからなぁ。騎士団の総司令官を辞して、宰相補佐官になってくれるって話だったのに、あれよあれよという間に、気付けば弟君が補佐官だよ。弟君に騎士団に行ってもらおうかと思ってたのに。」 皇太子殿下がグチグチと話し出す。 もう終わった話をグチグチ言うのは男らしくない。私はわざとらしいくらいのため息を、長くついてみせる。 「…最後は殿下もご納得頂けていたかと思っておりましたが?」 「…はい。お陰で側妃にコラーシェを迎える事が出来ました。ありがとうございました。」 「…皇太子殿下…そこで頭を下げるから、ランガスが帰ってきてくれないんですよ…」 宰相たる父が皇太子に話しかける。 「…とりあえず王宮からの仕事は請け負っているのだから、納得して下さい。私はあまり人と関わらず、穏やかに過ごしたいだけです。」 「…まぁ、君の存在感はあり過ぎるんだよなぁ。行き過ぎた淑女となれば毒も盛りたくなるし、上を狙う人間からすると目に着きすぎて邪魔になるんだろうなぁ。」 皇太子が犯罪者側を擁護するような発言をしだした。 軽口なので、本気でない事は十分理解している。 「…皇太子殿下は離縁がお望みなのは分かりました。それで?本題はなんですか?」 私の言葉に、皇太子がわぁわぁ喚き出したが放置する。 「ホーガスト辺境地へ支援物資を持って行く役を受けてくれ。ついでに輸送ルートも考えて貰えないか?」 ついでの仕事がデカ過ぎる。お土産買ってきてのレベルで話さないでほしいものだ。 ホーガスト辺境地は王都との間に険しい山々が連なってあり、普段の物流ですら上手くいっていない。 そこに先日、大雨で災害が発生した。 物資は仕方ないかもしれない。それでも私がする仕事では無いが。しかし輸送ルートとは…。山を越えて行くには一苦労なのは分かるが…。 「…輸送ルート確保出来たら、とりあえず騎士団の総司令官の席から除名しておく。確実に。」 父は嬉しそうに話す。父としては、どっちに転がっても良い話だ。駄目なら私が総司令官に戻るし、上手くいけばホーガスト辺境地への輸送ルートが確保出来る。 話を蹴ることは出来るが…。 少し考えて、私は笑顔で3人を見た。 「…では、輸送ルートの考案と物資の運び役は受けましょう。実現した時は、お願い事を3つ程…」 私の言葉に、三人が三人して「出た」と言っている。 当たり前だ。私の仕事では無い事を受けるなら、それなりの対価をだ。 「簡単ですよ?1つは、今後は騎士団総司令官の役も宰相も宰相補佐官もつきませんので条件に出さないで下さい。」 もう毒を二日続けて盛られるのは勘弁だった。耐性があっても、二日続けて毒を食らえば流石に死にかけた。 「2つ目は、一人…男爵の爵位を授けて欲しい方が…。そして3つ目。マダムシャーリーのドレスの予約優先権を下さい」 簡単でしょ?と私は笑顔で3人見る。 こうして辺境地への遠征が決まったのだった
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