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妖艶ドレスお披露目会
書籍店での仕事を終え外に出ると、スーツ姿のランガス様が待っていた。
ふわぁぁあァァァ〜。
仕事後のご褒美〜っっ!!
全私がスタンディングオベーション!!
照らす夕陽も貴方を讃える為に存在すると思います。
…そんな素敵な紳士が、私の事を好きだと甘く囁いてくるんです。
どれ程私が悶えてるか分かります?
「ミリー!お疲れ様、今日も可愛いね」
仕事が終えて少し疲れた私でもそう言ってくれる。
嬉しくて、私も駆け寄ってしまう。
そんな私を抱きとめ、あっという間に額に口付けされた。
「食事をしよう。そしてその後は君の自宅だね。楽しみだ。」
あぁ〜、その笑顔で、私は蕩けてしまいそう。
そんな私を連れて、ランガス様は歩み出した。
◇◇◇◇◇◇
食事を終え、私は自宅へとランガス様を案内する。
そこでランガス様は驚愕した。
え?アパート…ダメ?古い?そりゃー新築じゃないけど…。
むしろ古い。レトロな石造りの、歴史あるアパートメント。けどコレが味があって素敵なのだ。
しかしそこではなかったらしい。
「…一人で暮らしているの?護衛なし?隣の住人は女性?階下の人間は?」
一気にまくし立てられた。
「…隣は空き部屋ですぅ〜、下は分かりません…。…怒ってる…感じですか…?」
「…ごめん…ちょっと予測外で…。一人で住んでいるとは聞いていたが、両親の家の側とか敷地内かと…。」
眉間に指を当てて、ウームと何やら考えている。
「…入るの…嫌です?止めますか?」
「…とんでもない。ごめん…不快とかじゃないよ?素敵なアパートだ。君のお気に入りのお城だね?凄く嬉しいよ、招いてもらえるの」
慌ててランガス様は笑顔で応えた。
大丈夫かな?と不安になったものの、ランガス様自信が大丈夫だと言うんだからまぁ良いか!!と安直に考え、部屋に案内する。
部屋の中は、玄関、ダイニングとリビングが一緒になった部屋、寝室、浴室、トイレ、小さなベランダだ。
外観は石造りだけど、内側は木を使って内張りがされている。
「ミリーらしい、可愛い部屋だね」
身長差があるから、額が1番近い。だからか、結構頻回に額に口付けがされる。
私はフックにランガス様から預かった上着を掛け、ついでに杖も玄関の端に置いておこうと預かる。
「…あ、杖気を付けて。それ仕込み杖だから。すぐには抜けないようにはなってるけどね。」
気軽にそう言われた。
仕込み杖?じゃあコレ、中は剣なの?
私はソロ〜と置く。その仕草に、ランガス様は笑っている。
だって剣なんて触った事もないんだもん。
ランガス様が座ると、小さく見える2人がけのソファを勧める。そして逆に、その隣に座るようにランガス様に促された。
横に座ったら、本当にスペースが無くなって何かクスクス笑ってしまった。
「…どうしたの?」
不思議そうに、でも私を見て楽しそうに微笑むランガス様が聞いてきた。
「…ランガス様、おっきいから…ソファが小さく感じます」
「…そうだね。じゃあ、縮めてみる?…膝においで」
そう言われて、促される。横座りでランガス様の膝の上にちょこんと座ると、腰を抱かれしっかり座らされた。
嬉しそう…。何か膝に座らすの好きそう…。
もちろん私もくっ付けて幸せだけど。
「…最近…ランガス様忙しそうですねぇ…」
「…ちょっと最初だから、バタバタしてるのは確かかな。でも軌道に乗ったら落ち着くとは思うよ」
スリスリくっつく私を、ヨシヨシと撫でてくれる。
優しい…。大きな手が気持ち良い…。
「…凄いです…鉄道蒸気機関車…作っちゃったし…」
「ミリーの考えた事を実現しただけだよ。半分は君のおかげだ。二人の幸せの為の物だ。ブドウの森…出来たら見に行こう…」
蒸気機関車に乗って、ブドウの森を見に行く。
つまりそれは…旅行!?
一拍おいて、私は目を見開いてランガス様を見る。
1泊じゃ無理だろうから…何日も一緒にいるの!?凄い!!
旅行を夢見てポヤーンとしてしまう。
「…ところで、今日のお招きの目的は?」
「…あ、そうでした」
そう。今日はとうとう、ランガス様に妖艶ドレスを披露する為にお家にご招待したのです。
ランガス様の膝から飛び降り、寝室にあるクローゼットから2着のドレスを持ってくる。
濃紺のドレスと、ベージュのドレス。
2着のドレスを腕に掛けて戻ってくる。それをテーブルに置いて、まずは1着目。濃紺のラメラメのマーメイドラインのドレス。オフショルダー使用。結構胸元が開いてるから、アクセサリーも大ぶりが良さそうなデザイン。
身体の前に合わせて見せてみる。
「…似合わなそうです…?綺麗なドレスなんですけど…」
「…綺麗なんだけど…何かミリーのイメージじゃないなぁ。…と言うか、それ…他の男の前で着て欲しくないなぁ。」
ランガス様は難しい顔をして見ている。
大人っぽすぎるのかなぁ。でも私もそんなに子供でもないんだけどなぁ。
「…色的には、もう1つのベージュの方が良さそう…」
テーブルに置いてあるベージュのドレスを指さして、ランガス様は言った。
「せっかくだし、着て見せて。綺麗なミリーが見たいな」
そう言われ、私はちょっとご機嫌になる。ベージュにラメの生地は大人しめながらも少しキラキラして、結構綺麗。
「…じゃあ、せっかくだし着てきます」
私はパタパタとベージュのドレスを持って、着替えに行く。
実は買ったものの、まだ身につけた事は無い。私も今日が初試着。せっかくなら似合うって言われたいな。
そしてドレスを身に着けた。
寝室の端に置いている姿見の鏡を前に、私はかなり戸惑ってしまった。
ホルターネックのドレス。首の後ろは、同布の幅広リボン。結構長めで、結んで垂れた布が背中をくすぐる。背中が結構開いてるとは分かっていた。しかしこれは…。リボンの布じゃ隠せるはずもなく…。
そして背中側の生地が…腰からしかありません…。
オーガンジーが重なった生地で、サラサラで綺麗。
でもあと少しでお尻ってとこからしか生地が無い。これは開きすぎでしょ。ってか寒いでしょ。
呆然としている私はかなり時間をかけてしまったのか、寝室のドアからノック音がした。
「ミリー?開けていい?どうかした?」
ランガス様の声が聞こえ、ドアが開けられた。
待って!!っていう暇もなかった。
「…え?」
扉を開け、中に入ろうとしていたランガス様の動きが止まって、またしても驚愕した顔つきになっている。
私は私で、驚きで隠そうにも隠せず、反射的に胸元を押さえて背中を向けてしまった。
いや、背中向けたら意味ないよ…。
自分の失敗に、顔だけじゃなく首辺りまで熱い。姿見に映る私は肩辺りまで赤い。
そんな私の側まで、ランガス様はゆっくり歩み寄る。
「…ねぇ…ミリー…」
背後からランガス様が肩を抱くように触れる。
「…もし…このドレス、私が確認しなかったとして…、ドレスを着て外で待ち合わせてたら…着てきてたの?」
耳元で言われた声色が、少し怒ってるように聞こえた。
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