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貸し出しスペースでの写本作業プラスα
私は貸し出しスペースで写本作業を行う。
長時間は辛いので、午後3時くらいから5時くらいまで。
前は時間は決めていなかったが、今は目的があってその時間にしたのだ。
実はその時間。週に1回か2回。お目当ての方が現れるからだ。
その方はフロックコートにスラックス。白いシャツに映えるタイ。杖を携えて店にやって来る。素敵な紳士様だ。
私よりも一回りは大きい体格。スーツが似合うという事は、きっと身体も鍛えられている。
実は前世でも、身体の鍛えられたスーツ姿の男性を見るのが好きだった。
とは言っても、モテる人生でもなかった。むしろ非モテだ。
鑑賞がメインの人生だった。
そして今回の人生でも同様だった。
別に悲しくないもん。言い訳のように思いながらも、目の保養に励む日々だ。
あぁ、顔も整って素敵。引き締まっている(予測)身体も素敵。グラビアが無いのが非常に残念だ。
今日は来店するかしら?期待しながら仕事をする。
すると今日は紳士様がやって来た。
来たーーーーーーっ!!
写本作業を行いながら、ついチラチラ見てしまう。
今日も素敵。私が写本した本を片手で抱え、もう片方の手でペラリと捲る。本に落とされた視線は少し俯いた知的そうな紳士様をより良く魅せる。
はぁぁ〜〜。堪能…。
窓から差し込む光が彼を照らす。何ですか、それ。カッコイイです。光さえ、彼を素敵に魅せる演出ですか?
心で大絶賛の私だが、もちろん声には出さない。
身に着けたベストのボタンからポケットにかけて、ゴールドのチェーンが見えている。アレは懐中時計のチェーンだろう。
携えたステッキは本を持つ腕に掛けられている。ステッキのグリップは彫刻が施されていて、それもまた秀逸だ。
そんな紳士様は何冊か本を手にすると、偶然私の方に視線をやった。
遠目ながらも彼の顔を正面から見る事が出来、私は心の中で悶える。最高です。今週も生きてて良かった。
そして仕事を頑張る私に最高のご褒美があった。
一瞬だが、紳士様がうっすら微笑んだのだ。
そして彼はその場を立ち去った。
今日も頑張ろ。
ご褒美を貰えた日は特に頑張れるのだった。
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