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思い出のマカロンはピンク色
書籍店での業務が終わり、私はいつものようにお店を出る。
すると相変わらず素敵な紳士様の、愛しのランガス様が待っていた。
「お疲れ様、私のレディ。」
駆け寄った私を腕の中に閉じ込めて、鼻先に軽く口付けながらランガス様はそう言った。
キャーッ!
この人、かっこいい〜。恥ずかしげもなく、照れることも無く言えるって素敵〜。はぁ〜〜〜っ。好き〜。
ランガス様の腕の中でそっと堪能する。
しかしそこは私の悪い癖が出たようで。
「ありがとう、私もミリーの事が大好きだよ」
苦笑しながら、そう言われた。
もう、恥ずかしげもなくは私だよ…。
「アパートの件、突然でごめんね?本当、話があっという間に進んでしまってね」
エスコートされながら、ランガス様にアパートの改装の件で謝られた。
「私は大丈夫ですよ?でも仮住まいの所って何処ですか?」
「今から行く所。君とマカロンを食べた思い出の場所」
ランガス様はニヤリと笑って言う。
マカロンをランガス様と食べた所って…。
「…え?…まさか…ランガス様のお屋敷?」
「…正解。」
初めてランガス様のお屋敷に招かれて、お茶をしながらマカロンを食べた時の事を思い出し、顔が火照る。
「…何思い出したの?ミリー?」
ワザとランガス様は私にそう言う。
顔が悪戯が成功した人の顔だよ!もう!カッコ可愛いよ!
「…ワザとそう言う…」
「ふふっ。勿論、ワザとだよ。可愛い君との初めての口付けを私が忘れるはずもない。…またする?マカロン…食べ合いっこ」
もう顔がこれ以上赤くなる事はないってくらい赤い。きっとそう。だって顔が熱くて堪らない。
「…甘かったよね?…ピンクが苺味で、オレンジ色はオレンジ味だったよね?…私は苺味が良かったな」
「…もう!虐めないで下さい!」
ワザと言ってるって認められて、あの日の事を口にするランガス様は私を揶揄う。
「…虐めなんて酷いな。本当の事なのに。苺味…良くなかった?」
恥ずかしくて、ランガス様の腕にしがみついて顔を隠す。
苺味の、ピンクのマカロンは初めての口付けの味。
思い出すと、未だにドキドキする。
またする?と言われるだけで胸が高鳴る。
「…ハハッ…ごめんね?可愛い…ミリー。あの日よりも、もっと好きだよ?」
反省してるのか、してないのか。甘い、ランガス様の囁きは続いた。恥ずかしいのに、でも好きだと言われて嬉しい。
「…今日は私の自宅で夕食を摂ろう。家の者も紹介したいしね?」
腕にしがみつく私の手に、ランガス様の大きな手が重なる。
宥めるように、ゆっくり手の甲を撫でる。
紳士の愛しい人は、何時でも余裕があって狡いな。
私だけ何時もアワアワしてる気がする。
「今日は君の好きな白身の魚らしいよ?君が来るのを家の者達は楽しみにしていて、頑張って準備するって言ってたよ」
「え?うわぁ、緊張します。大丈夫かな?」
「君はありのままの可愛い姿で、ニコニコしながら来てくれたら良いんだよ。」
いや、それはどうなんだろう?
ちゃんと大人の女性として、お招きに対して対応したいよ。
「じゃあ、馬車にどうぞ?」
離れた場所に待機していた馬車に案内され、エスコートされるまま馬車に乗り込んだ
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