執事さんも紳士さんでした

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執事さんも紳士さんでした

ランガス様のお屋敷は、これで2度目の訪問。 前回の薔薇も素敵だったけど、今はダイヤモンドリリーが咲き誇っている。 相変わらず庭師の方が頑張ってるようだ。 屋敷内に入ると、昼間にお会いしたナーマスさんが出迎えてくれた。 「ようこそいらっしゃいました。今宵はマドモアゼルがお好きだとお聞きしたメニューを準備致しました。料理人が、主の美しき姫に食して頂けると張り切って調理しておりました。お楽しみ頂けると一同幸甚に存じます。」 くはぁ〜っ!! 執事さんまで紳士!! 両手を顔に当て、思わず天を仰いでしまう。 「こら。紳士的だと、誰にでもそんな態度になるのかな?悪い子だな」 横にいたランガス様は、耳元で囁いた。 「え?…いやいやいや!そんな変な意味じゃ!!」 焦ってランガス様を見て言い訳する私を見て、ランガス様は意地悪く笑っている。そして目の前のナーマスさんも小さく笑っている。 …ダメダメ。大人の女性として、ご招待を受けてるんだから凛とした態度でいかないと…。 少し表情を引き締めてシャキッとする。 「今宵はお招きにあずかりまして、誠にありがとうございます。」 私はランガス様の腕から離れ、二人に少し頭を下げる。 すると、ランガス様は私の手を取る。 「ミリー、ここではいいんだ。もっとリラックスして、私の好きな君でいて…」 指を絡ませて握った手をくるっと反転させ、ランガス様は私の手の甲に口付ける。 人前で…!!今更だけど、人前で!! その口付けは挨拶とは明らかに違う!! ランガス様は誰の前でも変わらない。 嬉しいけど!!でも恥ずかしい…。 「これはこれは…。配慮が足りず、申し訳ありませんでした。お嬢様に気を使わせる結果になりましたね。」 ナーマスさんはランガス様を見て、嬉しそうにそう言う。 「主が女性を屋敷に呼ぶのはお嬢様が初めてでして、家臣として張り切ってしまいました」 楽しそうに微笑みながら、ナーマスさんはダイニングルームへと案内してくれる。 もうスマートだねぇー。決して此方を非難しない謙った物言いが素敵。 私もそんな風に、サラリと人に気遣えるようになりたい。そんな事を考えながらランガス様と共にダイニングルームへと入った。 ◇◇◇◇◇◇◇ 食事を摂りながら『仮住まい』について話をした。 仮住まいは、最初に言われたようにランガス様の住むこのお屋敷。 「この屋敷は知っての通り女性が居ないからね。仮住まいの間だけでも家の侍女達の持て成しに付き合って貰えないかな?」 ランガス様がワインを口にしながらそう言う。 ん?持て成しに付き合うとは? 私が頭を捻ってると、ランガス様はそれを見て小さく笑っている。 「母がこの家を出てから女性が居なくてね。久々に女性に仕えるのが楽しみらしいよ?」 「…仕える…、仕える!?」 ふふっとランガス様が含んだ笑い方をする。 「うん。張り切って準備してた。お嬢様に仕える!!って。私は世話のしがいが無いらしい。ちょっとの間、お姫様ごっこに付き合ってあげてよ」 「…え…、でも…あの…。私…」 「ついでに私の奥方ごっこもしてくれたら最高だけどね」 次々に引っ掛かる用語が出てきます!! お姫様ごっこに奥方ごっこ。 「気楽に考えて。いい機会だし、単にたっぷり甘やかしてみたいだけだよ。それでミリーが少しでも私に魅力を感じてくれたら…って思っただけ。まぁ、お姫様扱いがどうしても嫌な時は言って。手加減してもらうから」 なんかめちゃくちゃ企まれてる。 って言うか、ランガス様の魅力なんて…。 もう既に天元突破してますけど!? 「工期は一月。…楽しみだね、一月の…仮初の蜜月だね」 グハーッ!! 蜜月…。これ以上濃い物があるみたいです。 色々な事を言われて、アワアワして考えが纏まらない。 「…ちゃんと実感してね、ミリー。君を愛する私を。」
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