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仮初の蜜月
食事を終えると、私は待機していた侍女さん達に拉致された。
笑顔で見送るランガス様の笑顔は楽しそうだ。
湯殿に連行され、ピッカピカに全身くまなく磨きあげられた。
高級エステだ…。
前世でも行ったことないけど。でもこれはエステだ。
薔薇のオイルを塗られ、私の身体はつっやつやのピッカピカ。
そして…肌触りの良い寝衣。
私は当たり前のように、ランガス様の寝室に案内される。
「おかえり。どうだった?」
私を抱き寄せながら、ランガス様は嬉しそうに出迎えてくれる。
私はこの状況を受け入れて良いの?
勿論、ランガス様とお泊まりとか既にしているんですよ?
でもこれは…。
初夜仕様ですよね?
戸惑う私の腰を抱き、そのまま抱き上げられる。
「うひゃっ!!」
ちょっと間抜けな声を上げた私に笑いかける。
「…奥方ごっこ…付き合ってくれるんだろう?…待ち構えてた旦那様にご褒美の口付けはくれないの?」
抱えあげられた私は、見下ろす形でランガス様を見た。
目が合ったランガス様はゆっくり瞼を閉じる。
うひゃーっ!!
口付けを待たれてる!!
高鳴る胸が私を落ち着かなくさせる。
そろっとランガス様の唇に、自分の唇を重ねる。
チュッと音を立てて、離れる。
唇が離れると、ランガス様の瞼が開く。
「…足りない…。もっと。」
キャーッ!お強請り入りました!!
抱え上げた腕の反対で、軽く背中をポンポンって叩かれる。
「…ほら、もっと頂戴。」
そう言われて、促されるまま唇をもう一度重ねる。
するとランガス様から、チュッて唇を軽く吸われる。
もうすっかり、唇を軽く吸われたら口を開く習慣がついている。
そして口を開いたら、舌が入ってくる。
絡まる舌が、熱を呼び起こす。
「…んっ…」
「…仕事が終わって、こんな素敵なご褒美があったら…幸せだな…。ね?奥様?」
ポヤンとしていた私は、ランガス様の言葉で『奥方ごっこ』がスタートしているのに気付く。
「…お待たせしました…その…旦那様…?」
「…あぁ…良いね…。」
嬉しそうなランガス様は、私を抱えたまま部屋に入る。
そしてそろっと寝台に下ろした。
「…ごっこ遊びでも…繰り返していたら信じてくれるようになるのかな?」
「…え?」
ランガス様が私の頬を撫でる。何だか切なそうな顔で。
「好きだよ…ミリー。…君と…共に生きる未来を…本当に望んでいるんだ…。」
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