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紳士という名の王子様のお出迎えです
「こんにちは、ミリー嬢。今日は一段と素敵な装いだね。可憐な君に良く似合う」
ニコニコと微笑んでやって来た紳士様。私の心のアイドル。私の王子様!!
ランガス様は狙撃手の様に、私の心に弾丸を打ち込んできました。
グハーーーーッ!!
貴方の方が輝いてます!!世界の光は貴方のために!!全ての眼差しは貴方に向かう!!全ワタシがスタンディングオベーション!!
あるはずも無いレッドカーペットが見えるよう。
誰か画家を!!画家を呼んでくれたまへ。
近付いてくるランガス様に見とれながら、私は心の中で拍手喝采していた。
気付けば側に立っているランガス様が、少し屈んで私の顔を覗き込んでいた。
「⋯でも⋯今度、私にも素敵なドレスを選ばせてくれるかい?今日の装いに負けないくらいの素敵なドレスをプレゼントしたいね」
目線が合うと、ステキ光線にやられてしまう。
その囁きで意識がほわ〜〜〜ってなっちゃう。
「⋯さぁ、行こうか。私のレディ」
グハッ!!聞かれました?
私のレディって!!レディ!!
頭がクラクラしてきた。でもまだ今日は始まったばかり。いや、始まってもない!!
今日は、私が勝手に決めた『紳士様祭り』の日だ!!
こっそり堪能するんだ!⋯ほら、今後はこんな楽しみ無いかもしれないし⋯。最後かもしれないし⋯。
その考えで少し落ち着いた私は、ランガス様の横に立った。
それにしてもランガス様は背も高い。
並ぶとよく分かる。私は153センチ。そして頭一つ上にランガス様の小顔がある。
「⋯どうかしました?」
思わずジーーーッと見てしまった私に、ランガス様は面白そうに見つめてくる。あぁ!!⋯いぃ!!その表情もカッコ可愛い!!
「いえ、ランガス様は背が高いなぁと⋯」
「⋯あぁ⋯、気付けば6フィート超えてたからね⋯」
6フィート⋯確か⋯184⋯くらい?たっか!!
そこまで背が高いと世界が違って見えそう。
「⋯腕、捕まりにくい?」
エスコートの為に差し出された腕を私に寄せながら、ランガス様は言う。
「⋯大丈夫です」
心遣いが嬉しくて、微笑みながら言う。
いかん。デレデレし過ぎたら、流石に引かれるかもしれない。
ちゃんとキリッとしよう。
孤児院での読み聞かせも、あんまりデレデレしてたら断られるかもしれないからねッ。少しくらい出来る女に見られたい。
脳内で紳士様祭りを開催している私をエスコートして、ランガス様は歩き出した。
待ち合わせた少し先に馬車があり、それに乗るようにエスコートされる。
中は4人くらいが座れるスペース。
凄い!!辻馬車には無いクッション!!
座り心地良い〜。コレだけでも感激だわ〜。
勧められるまま座った私は、お貴族様の馬車に感動しちゃう。
すると、あたかも当然と言わんばかりに、ランガス様は私の隣に座った。
あれ?正面に座らないのかしら?誰か他にも乗車するのかな?
「⋯クックッ⋯可愛い⋯。ミリー⋯って呼んでも良い?」
「⋯は⋯っはいっ!!⋯嬉しいですっ!!」
呼び捨てきたーーーッ。まだ祭りはフィナーレじゃないよね!?
「⋯フッ⋯コロコロ変わる表情が堪らないね⋯」
少し遠慮がちに、ランガス様の手の甲が私の頬を撫でた。
気の所為かもしれないけど、ランガス様の頬も少しだけ赤く見えた。
「⋯隣りに座りたかったんだ⋯君の可愛い表情を身近に見たくて⋯見逃せないよね⋯」
背の高いランガス様は、またしても私の顔を覗き込む。
あぁ⋯!!そのカッコ可愛いの⋯好き⋯っ!!
紳士様祭り序盤にして、一人でファイナルのように盛り上がる私を乗せて、馬車は出立した。
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