スイーツは甘い味

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スイーツは甘い味

ランガス様のお屋敷は、入口からお花で囲まれていた。 「⋯気に入ってくれた?今の時期は薔薇が咲き誇って綺麗だよね」 馬車から降り立って、私に手を差し伸べてくれるランガス様。 薔薇だってあなたを彩る為のもの〜っ!! 背後にある薔薇は、ランガス様の色気たっぷりの姿を引き立てた。 「元々は母が好きで、庭を薔薇の庭園にしていたんだ。今は庭師に任せ切りなんだが、庭師の腕が良いので未だに見応えのある庭園を保っているよ。ミリーが楽しんでくれたなら、庭師も世話をしたかいがあるってもんだな」 いえいえ、ランガス様の背後を飾るに相応しい薔薇達。庭師もその為に勤しんでいたに違いない! この熱い思いを語るのは出来ない。何故って?それは私がランガス様の色気に翻弄されて惚けているから。 あぁ⋯もう存在が罪だわ⋯。 男性の色気って、艶めかしい。 お陰で薔薇ですら艶めかしく見えてきた。 ポワ〜っとしている間に、気付けば屋敷の中に案内されていた。そして私の荷物はランガス様がしっかり握っている。 イケナイ!!勿体ない!! 隣で歩く紳士様のお姿を見るのは、コレで最後かもしれないのに!!この眼にしかと焼き付けなければ!! 私は自分の気を引き締める為に、叱咤する。 ランガス様に案内されたのは応接間だった。 お茶の用意がされたテーブルの側のソファを勧められる。 「どうぞ。せっかくだし、私の入れた紅茶をお出ししても良いかな?結構上手く煎れる事が出来ると思ってるんだ。あ、スイーツはどれにする?スコーンと、最近流行ってるマカロン、そしてチョコレートと用意したんだけど、苦手なのはある?」 ランガス様は当然のように私の横に座り、そして怒涛のように話し始めた。 うわぁー。 紅茶、ランガス様が煎れてくれるって。 スイーツ3種だって。 てゆーか、⋯給仕⋯ランガス様がするの!? そんな恐れ多い!! アワアワしだした私を見て、ランガス様が笑う。 「⋯何時もは召使いに頼むんだけど、今日は特別」 ふふふっ…とランガス様は企み成功と言わんばかりの笑顔。 「⋯せっかく君と二人で過ごせるんだから、誰にもいて欲しくなかったんだ」 またしても耳許で囁かれる。 気が遠のきそう⋯。鼻血垂らしながら。 しっかりして、私⋯。このままじゃ、志半ばにして倒れてしまう。⋯まだ紳士様祭りは始まったばかりよ。 それにしてもサービス旺盛よね。 「⋯にっ⋯苦手なモノはありません。オススメで⋯」 え?コレって⋯執事カフェ的な⋯? 指名制?いくらいるの?しかもプレミアム室使用? ノンアルコールだけど。スイーツだけど。 ⋯良い⋯。この天国⋯。 ⋯ワタシ⋯太客になれるかな⋯。 目の前に用意される紅茶とスイーツ。そしてランガス様の笑顔。 もう妄想が止まりませんっ!! 勧められ、紅茶を口にする。 「ガヴァル産の紅茶が良いって聞いて用意してみたんだ。どう?」 ランガス様が隣でティーカップに口をつけながら言った。 もうカップになりたい⋯。 「⋯美味しいですぅ〜」 「良かった⋯。ミリー⋯君は笑顔だけでも多彩だ⋯。コロコロ変わる表情にクルクルした瞳⋯可愛いな⋯」 なんて褒め上手⋯。紳士様は何もかも完璧なんじゃないですか?もう!もう!最高! 「⋯ランガス様こそカッコイイし!カッコ可愛いし!気配り上手だし!⋯姿形も最高なのに⋯声まで素敵⋯どうかなりそう⋯」 言うつもりのなかった心の声が、思わずポロポロと口に出てしまった。 ビックリした表情のランガス様に、やっと気付いた私はハッ!と気付いた。そして恥ずかしさで顔が茹で上がった。暑い。 「⋯ハハッ⋯嬉しいよ⋯。私の声が好き?」 もう何度もされている仕草。耳許で囁かれる。 「はっ⋯は⋯っはい!」 思わず私はシャキッと背筋が伸びる。肩に手を置かれ、胸がドキッとする。 「⋯私もミリーの小柄な姿も、素直な表情、可愛い声が好きだよ。⋯ごめんね、もっと紳士らしくゆっくり君に近付く予定だったんだ⋯」 ランガス様の唇が耳に触れそうな程近くで言葉を紡ぐ。 あ⋯魔法があるのなら、今⋯掛けられている⋯。そう思った。 「⋯時間は関係ないよね?⋯ミリー⋯君が可愛くて堪らない。私の腕の中に閉じ込めても良いかい?」 ランガス様はそう言うと、ソファに腰掛けた私の肩を抱き、膝裏に腕を回すと座った自分の膝の上に、私を抱え上げてポンッと乗せた。
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