腕という籠の中の

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腕という籠の中の

⋯なんということでしょう。 力強いランガス様の腕に攫われて、ヒョイッと⋯。 ランガス様のお膝の上に、現在私は居ます⋯。 しかもランガス様。立ち上がりもしませんでしたよ?座ったまま私を抱き上げましたよ!? 何それ!?そんな事出来る人いるの!? いや、ここにいたけど。 「⋯はい。閉じ込めた⋯」 アワアワしてた私を、ランガス様は腕の中に閉じ込めた。 横座りの状態の私のこめかみに唇が触れ、チュッと音がした。 「⋯凄く⋯近いね⋯ミリー⋯」 「⋯は⋯は、は、⋯はいっ!!近いです!!⋯ラ、ラン、ラン⋯ランガス様ッ」 「⋯ハハッ⋯私の名前が楽しそうな名になってる⋯」 吃る私の言葉を聞いて、ランガス様は楽しそうに笑う。 至近距離からのキラキラ笑顔⋯。 いや、もう、⋯ランガス様は私をどうしちゃうの!?どうにでもして〜っ!!⋯って気分が爆上がりする。 「⋯これ、私も知らないスイーツだったんだけど、マカロン?最近流行っているらしくて⋯気に入ってもらえるかな?」 ランガス様は、膝に乗せたままの私を腰に回した片手で支えながら、マカロンを手にする。 「はい⋯あーん」 ⋯あーん⋯? 非常事態に、私の動きが止まる。 あーんって言うと⋯小さい子がお姉ちゃんとかお母さんにしてもらう⋯あーん? 目をパチパチして、ランガス様を見てみる。近過ぎてキラキラしてるのを逆らうように頑張って。 しかし、私の抵抗など蟻!目の前は象!⋯ってくらい、無駄なものだった。 目の前の紳士様は、キラキラした可愛い笑顔で私を見ていた。すっごい期待してるって顔で。 いっ⋯息止まる!! 「⋯ミリー⋯あ〜ん⋯てして?その小さなお口を開けて?」 甘い!!!! 仕草も言動も行動も!!!! キャパオーバー気味の私は相変わらずアワアワしちゃう。 そのアワアワしてた時、うっすら開いた口にマカロンが近付いてくっ付いた。 「⋯おや⋯、パクッてしてくれない?イヤ?」 その言葉に、慌ててパクッて食べる。ちょっと大口過ぎて、ランガス様の指を少し食べてしまったけど。 「⋯クックッ⋯可愛い⋯。思わずマカロン引こうかと思ったけど、指まで食べられて機嫌が治ったよ⋯」 指を食べられると機嫌が良くなる? 何やら面白い事を言い出したランガス様を、私はジーッと見てしまう。 「⋯流石に分からないよね⋯。」 私が食べてしまった指をランガス様は舐めながら言う。 ひゃ〜〜っ!! な、な、⋯舐めた!! 「⋯だって、ミリー⋯君、私が口付ける前にマカロンに可愛く口付けただろ?⋯まだ私は許しも得てないのに⋯」 世間の紳士様は、こんな話術を使うんですか!? 恋愛小説で淑女を口説くシーンはたくさん読みましたが、もっと⋯遠回しで⋯。 「⋯マカロンの後回しにされても怒らないから、同じようにしても?」 「⋯は、は、はい⋯よろ⋯」 私の言葉が終わる前に、ランガス様の顔が私の顔の前に。そしてチュッて、唇に触れた。 「⋯甘いかもと思ったけど、軽く触れるだけじゃ分からなかったなぁ」 ランガス様の大きな手のひらが私の頬を撫でた。 自惚れかもしれないけど、すっごく嬉しそう⋯。 ランガス様が私の額と自分の額をくっ付けた。 「マカロン、甘い?」 「甘い⋯です⋯とても⋯」 もうアワアワも出来ない。動きが止まる。 何もかもが近い。身体も顔も体臭も。 「⋯そっか⋯。私に、口付けの理由をくれる?⋯君に触れる理由を必死に探してる⋯。」 「⋯はい⋯。」 もう既に朦朧としてる私は、ポワ〜としたまま返事をする。 「⋯じゃあ⋯これ、食べて⋯」 ランガス様はマカロンを軽く咥えて、私の口元に差し出した。 もう何も考えられずに、吸い寄せられるように小さくそのマカロンに齧り付いた。 ランガス様の唇までは届かずに、小さく齧り付いた後に少し顔が離れた。小さく食べたから、口の中のマカロンは直ぐに消えた。 ランガス様はその様子を見て、続けて齧った跡のあるマカロンを口に咥えたまま私の口にくっ付けた。 反射的に、もう一度⋯。もう次は唇が触れてしまう。 そう思っていると、そのマカロンはランガス様の口に消えてしまった。あっという間にゴクンッて音が聞こえた。 そして何も無い筈の口が私の口に触れた。 チュッて触れたかと思うと繰り返し同じようにされた。 そして唇が舐められる。 「⋯甘い⋯口の中も甘いのかな?⋯ミリー⋯あ〜ん⋯」 言われるまま。うっすら口を開いてしまうと、ランガス様の舌がスルリと入ってきた。 いつの間にか人差し指と親指で触れられた頤をクイッと持ち上げられ、ゆっくりねっとり絡む。 舌の絡み具合が激しくなってくると、次第に口が大きく開いてしまう。夢中で口を開く。 ランガス様の口付けに夢中になってしまう。 初めての口付けは甘くて、情熱的。男性の色気に惑わされ、翻弄されるのだった。
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