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ピンクのマカロンは…
真っ赤な顔で、少し震えながら私の口付けに応えるミリー。
甘い、甘い口付け。
本当は直ぐに止めてあげようと思っていたのに、止まらない。
小さな口で、必死に私の舌に応える。その行為が拍車をかけている事に気付いていない。
角度を変えて、限界まで上に向かせたミリーの口腔内を蹂躙する。上顎に舌先を伸ばし舐めあげると、ミリーの身体がビクビクとしている。
良くない⋯。これは⋯、流石に⋯。
欲望を必死に抑え、私はミリーの唇から離れた。
「⋯ラ⋯ン⋯ガス⋯様⋯」
「⋯ごめんね、可愛くて⋯つい⋯。」
私はそう言いながらも、腕の中からミリーを離せない。
彼女のこめかみに頬を擦り寄せる。
「⋯これ⋯何の⋯ご褒美ですかぁ?」
高揚した頬、トロンとした瞳を見せ、ミリーは私に言ってきた。しがみつくという程には力が入っていない手は、私の胸の位置で服を握っている。
好意を持っている女性に、自分が与えた口付けがご褒美と言われる。止めた筈の口付けが再開するのは当然だと思う。
「⋯ン⋯ッ⋯⋯はぁ⋯ッ、んんーッ⋯」
耐えきれず洩れる声が艶かしい。
コロコロ変わる表情、豊かな表情を見せる瞳、側にいてこんなに魅了してくる人は初めてだった。
周りの貴族の淑女達は、口を大きく開けて笑う事ははしたないとされる。もちろん、ミリー以外の女性がそのような事をしていたら呆れる気がする。
自分勝手な考えをランガスは考えながら、ミリーへの口付けを続ける。
可愛い⋯。口付けに感じている。明らかに。
ビクビクする身体をもっと自分のものにしてしまいたい。
しかしダメだ。私は自分に言い聞かせる。
ミリーの存在を知ったのはもっと前だが、昨日初めて声を掛けて、今日初めてお茶を一緒に飲んだ所だ。
既に行き過ぎている事は自覚している。常軌を逸している。
必死の思いで唇を離す。
息絶え絶えのミリーが可愛い。力が入らないのか、唇が震えている。繰り返した口付けで、唇が濡れて赤い。薄く開いた口から、離したばかりの舌先がチラリと見えた。
「⋯悪い⋯。君の好きな“紳士様“に戻る⋯。」
そう言いながらもミリーを膝から下ろせない私は、口付けをしない為にギュッと抱き締めた。
「⋯ふふっ⋯。素敵な紳士様ですよ、ランガス様。もう⋯私みたいな小娘は⋯メロメロです⋯。この広い胸は何ですか〜。はぁ〜、堪能〜」
小声で呟くミリーは私の胸の中に収まっている。
あ、コレは心の声だな。
私は、昨日からたまに飛び出るミリーの“心の声”を聞く。
口付けに拒否や呆れは無いようだ。しかも堪能されてるらしい。良かった⋯。このクセは無くさないで欲しいな⋯。
ホッとしながら、ミリーを抱き締めこちらも堪能する。
すっぽり収まる小さなミリーが胸にすり着いてくる。
可愛い⋯。
何度も繰り返すが、可愛い⋯。
何時もの私はこんなに女性に夢中になる事など無い。
屋敷の者や家族にはそれなりに優しいが、他人に対してはむしろ“冷酷”だと評価される。
でもミリーの前ではそんな私の姿が出てこない。自然と甘い対応になってしまう。
好意を持ってしまうとこうなってしまうのか⋯と、始めて自覚した。
甘やかしたくて堪らない。腕の中で、甘やかして、甘えて⋯。
「⋯ミリー⋯今度、孤児院で読み聞かせするのは何時になる?」
ふと、ミリーが次の孤児院の慰問を何時にするのか気になって聞いてみる。せっかくだから、私が慰問するのも合わせて行こう。
せっかくだから会う機会をどんどん増やそう。
自分の考えに少し笑ってしまう。
なんて露骨な恋心だ。でもミリーなら受け入れてくれそうな気がした。紳士様には遠いかもしれないが。
「⋯はい⋯えっと⋯慰問⋯あ、3の日です。午後の2の鐘がなる頃に何時も行きます!!」
慰問の話をすると、少し意識がハッキリしたのかミリーの言葉がはっきりした口調になって返ってきた。
あ、しまった。もう少しトロンとしてて欲しかった。
案の定、ミリーは今の状態に気付きアワアワしだした。
離して欲しいと言われてしまうかも?そう思ったが、ミリーは俯いただけだった。
「⋯迷惑じゃ無ければ、同じ頃に私も行って良いかな?」
「⋯嬉しいっ!です!!」
パッと笑顔が弾けた。
「私も嬉しい⋯。君と一緒に過ごす時間を増やしたい⋯。信じてくれるかい?⋯凄く⋯君が好きだ⋯。」
私が思わず口にした告白に、ミリーの顔がポポポッと赤くなる。こんな可愛い存在を気付いていなかったなんて。
「⋯もう一度⋯食べる?」
耐えれなくなった私は、ミリーをもう一度誘惑する。
「⋯マカロン⋯食べたくない?」
ピンクのマカロンを自分の口に咥えて、ミリーの返事を待たないままそっと差し出した。
「⋯食べたい⋯です」
ミリーの唇がそろっとマカロンに噛み付いた。
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