ときめきと切なさの狭間

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ときめきと切なさの狭間

結局、ランガス様のお家に小さな子はいなかった。 童話の読み聞かせ⋯どうすれば良いのかしら? ⋯と言うか、ずっとお膝の上⋯。重くないのかな。 少し冷静さを取り戻した私は首を捻って、うーむと考える。 少しは知的に見えないかと思いながら。 そんな私を膝に抱えたみのランガス様は、クックッと笑ってる。楽しそう。 「⋯重くないよ。ずっと抱えていたいな…。このまま宝物にしてしまいたい⋯」 あらら、また声が出てたかしら?悪い癖だわ。直さなきゃ。 「⋯読み聞かせ⋯してくれる?⋯側で君の声が聞きたかったんだ⋯。本の読み聞かせじゃなくても良いけど⋯」 「⋯?本の読み聞かせじゃないのって何ですか?」 単なる疑問で、ランガス様に聞いてみる。 本当に分からなかったから。 「⋯そうだね⋯例えば君が私の恋心を紐解いて、君のことばで読み聞かせてくれても良いけど?」 ⋯ワタシ ノ コイゴコロ ヲ ヨミキカセ⋯。 初めて聞く言葉の羅列のようで、理解出来ずに止まる。 「⋯さっき言ったよ⋯私は君の事が凄く好きだと⋯。好きだと思って、気持ちを込めて口付けたよ⋯。あと⋯君に私は何を伝えた?」 波に飲み込まれた様に、上手く息継ぎ出来なくてアプアプしてしまう。 少し頬を赤くしたランガス様は、私の手を捉えて、私の掌を口元に持っていった。 チュッと音がした。 「⋯あわ⋯あ⋯」 「⋯フッ⋯真っ赤⋯可愛い⋯。せっかくだから、君の可愛い声で、私が君をどう思っているか⋯ちゃんと理解してくれているか⋯教えて⋯」 もう!!翻弄され過ぎて、目が回る気分。 「⋯ほら、言って。私がミリーの事を凄く好きだって。」 ヒィ〜〜〜ッ!! 何、その責め苦!?甘い!!でも追い詰められてる感が凄い!! 「⋯あ、⋯ランガス様が⋯」 「うん⋯続きは⋯?」 嬉しそう⋯。照れて笑うランガス様が可愛い⋯。 カッコイイ男性が可愛い⋯これは重罪!!罪深い⋯。しかし尊い⋯。 逆らう事など、意識外。無理とかいう次元の話では無い。 選択肢が従う事しか無いって凄い。 「⋯私の⋯事⋯凄く⋯す⋯好き⋯」 「⋯うん、ミリーの事が凄く好きだ⋯。このままココに住まわせたいくらい⋯」 同棲決まりました!!⋯無理だけど!! ランガス様からの熱量が物凄くて圧倒しかされない。 「⋯ミリーは?⋯私の事⋯少しは好いてくれている?」 今度は少し切なそうな表情に変わり、握った手に少し力が加わった。 あら?当たり前の事を聞かれたわ。 「私がランガス様を好いてないなんて、天地がひっくり返っても無いです〜。こんなに紳士で、かっこよくて、引き締まった身体(多分)で、こんなに甘々⋯。⋯この声は罪深い⋯。」 「⋯フッ⋯嬉しいな⋯。多分、身体は引き締まってるよ?元々騎士団にいたんだ。3ヶ月前に退団したけど。」 新情報ゲットしました。 「⋯そうなんですか?それは鍛えられてそう⋯」 「⋯ハハッ⋯今度、しっかり触って堪能してもらおうかな。今日は勘弁してあげる。⋯次会った時も、その次も⋯いっぱい甘やかす。癖になって離れられないくらい⋯」 あぁあぁ゛〜っ! とにかくカッコイイ!!語彙力皆無の状態に落とし込まれる。 「⋯いっぱい⋯覚悟しててね⋯」 ランガス様の目がキラッとした気がした。 ◇◇◇◇◇◇ 離れたくないと呟くランガス様に送ってもらい、私は無事に自宅に辿り着きました。 紳士様祭り改め、ランガス様祭り⋯ファイナルまで凄かった⋯。 馬車の扉を従者の人が開けようとするのを制止するランガス様に、不思議に思って振り返ったら、扉のノブを押さえたランガス様からまたしても熱烈な口付けをされました。 中腰だった私が、その場でガクガクと座り込むのは仕方ないよね。 今度、お詫びにドレスを贈るって言われたのは辞退したけど⋯。 何っっって凄い!!⋯真実は小説より奇なり⋯ってこの事? 何度も「好き」って言われた⋯。 有り得ない⋯。 貴族様だよ?私はしがない市井の、書籍店の、身内だから店長をしてるだけのオーナーの娘。 ⋯でも⋯⋯。凄く好きって、すっごい熱量の目力で見られながら言われた。 めちゃくちゃときめいた。前世も今世も、こんなに可愛いとか好きとか言われた事ない。両親に言われた事はあっても、比較対象が違うし。 現実的ではない。そう考えると切ないけど、ランガス様を信じたい。 カレンダーの、次の読み聞かせの日に丸をつける。何度もグリグリと。 天元突破した恋情は、止まる事など知らなかった。
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