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「それと…」
「それと?」
氷華の心臓は、今にも破裂しそうなほどにドキドキとうるさい。
顔も真っ赤になって、湊にはバレている事だろう。
本当はこの場から逃げ出したい。
今すぐに窓から自分の部屋に戻りたい衝動に駆られるが、呼吸を整える。
氷華の部屋にも飾ってある運動会の時の写真が、湊の部屋にもあった。
だから頭が冷静になる。
いつだって勇気をくれるのは、背を押してくれるのは湊だ。
「好きじゃないって話も…嘘なの。」
湊が目を見開く。
「本当は、私も好きよ。湊、あんたの事が…。
でも、恥ずかしくて…素直になれなかったの。
さっきは嫌な言い方して、ごめんなさい。」
湊は淡い笑みを溢した。
「嬉しい。氷華ちゃんに『好きじゃない』って言われた時、午後だったから、嘘でもなんでもない、本気だと思ったんだ。」
氷華は目を瞬いた。
エイプリルフールに嘘をついて良いのは、午前までだと言われている。
確かに時計を見れば、とっくに午後になっていた。
「じゃあ、さっき『湊の事を好きじゃない。』って言った私は、ただの嘘つきってこと?」
湊は苦笑した。
「そうなるね。さすがの俺も傷ついたなぁ。」
湊は冗談めかして笑った。
「ああ、もう…私ったら…」
「なんてね、気にしてないよ。」
目を向けた時、湊は微笑んでいた。
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