プロローグ

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プロローグ

 僕たちは今、大きな壁にぶち当たってる。  何がなんでも、二人でこの壁を乗り越えなければならない。  ことの発端は僕の彼氏の実家に僕が行ったことから始まった。  彼のご両親を前にして。  僕は宣言してしまった。  僕が彼を幸せにするなんて、大それたことを。  そんな僕の彼氏には今、彼の親が薦める見合い相手で結婚を前提にお付き合いしてる彼女がいる。  厳密にはまだお付き合いをしている訳じゃないんだけれど。  どうやらそのお見合い相手と、半年間という期限つきで結婚を前提にお付き合いをしてみてから結婚するか決めるという事のようだ。  僕の彼氏は、自分がゲイだって事を両親に隠してたのに、彼のおばあちゃんが死ぬ前にあっさりとそれをバラしたみたいだった。  おばあちゃんの残した家を彼が遺産として引き継ぐことになって…。  生前におばあちゃんが多分、その家の話を家族にする時にでも僕たちの事を話したんだろう。  そんなことを知りもしなかった両親は、兼ねてからの話があったお見合い相手との話をすでに進めていた。  僕の彼氏はその人と半年間だけお付き合いをしなければならなくなってしまった。  だから。  その彼女が彼の本当の彼女になんかにならないように、僕はそれを阻止しなければならない。期限は半年。  もちろん僕の彼氏である本人にその人とどうにかなるなんて気は全くない。  けれど彼のお父さんが僕にあんな風に言ってきたから。僕はその条件を受け入れざるをえなかった。 『そんなに二人が本気だって言うなら、証明してみろ。』  なんて言われたら、出来ませんなんて言えるはずがない。  僕がそんな二人の間に割って入って、彼をその彼女から奪うというミッションが与えられた。  それが僕たちの仲を認めるための彼のお父様から突きつけられた条件だった。 『彼女から奪い取ってみろ、そうしたら認めてやる…』  彼の家族に僕を認めて貰うための条件。  男の僕が、男の彼を幸せにするために。 『僕が珖眞君を幸せにします』  そう宣言してしまった以上、僕はこの戦いに負けるわけには行かないのだ。  あの、おばあちゃんが残してくれたいえと僕たちの未来があるかぎり…。
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