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2. 入学と再会
あれから五年が経ち、真琴君の顔をほとんど思い出せなくなっていた頃⋯。
今日は花ヶ崎高校の入学式。期待と不安を胸に抱きながら、大きな正門をくぐる。
ブカブカでおろしたての制服に、新品の紐靴。
中学校とは違う、手持ち鞄をギュッと握りしめ、父・母と一緒にクラス分けの貼り紙を待った。
三十分くらい経った頃。
「これから、クラス分け表を掲示します。見たら、武道館に入りクラスごとに名前順で並んでください。」
新しい先生から指示を受けた。緊張で背筋が伸びるようだ。
母と父には待っててもらい、紙を見にいく。その途中で桃花に会った。
「お久しぶり!
桃花、一緒に見に行かない?」
「久しぶり〜!
萌寧、行こう〜!」
緊張しつつも、目で私の名前を探す。
「「あった!」」
桃花と、同じタイミングで名前を見つけた。
桃花に、
「何組だった〜?」
と聞くと、
「えっとね〜、一組だったよ。萌寧は〜?」
「私は、二組だった⋯。離れちゃったねー。」
「そうだねー。でも、いつでも話しかけに来てね!」
「うん、桃花もね〜!」
そして、父と母にも手を振ると武道館の中に入った。空気が緊張で重くなっていた。
「じゃ、桃花またねー。」
「うん、またね萌寧。」
手を小さく振って、自分の並ぶ位置に腰を下ろした。
(知らない人ばかりだ⋯。緊張するよ⋯。)
下を向いていると、
「皆さん、ようこそ飯田高校へ!
今日は、皆さんの晴れ舞台です。明るく笑顔で迎えましょう!」
「はい!!」
全員が声を出して返事をした。
「今から、入場します。その前に、バッジを付けてくださいね。」
入学にピッタリのバッジは、メダルのような形をしていた。
「それでは、新入生入場。」
音楽とともに、歩き出していく。ここから新たな一歩を踏み出すんだというワクワクが止まらなかった。
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入学式が終わり、クラスごとに教室へと入って行くことになった。
一年二組のクラスは、とても広かった。小・中学校とは大違いだ。
「名前順で、席に着いてくださいね。」
「はい。」
緊張が少し解けて、疲れが来始めている私の返事は小さかった。
岡松だから、窓側から二列目の席だった。
席に着くと、周りの人がどんな人なのか気になったため見回してみる。
右側は、明日香ちゃん。転校先の小学校で仲良くなったショートカットヘアーで、中学も一緒。 身長は157cmくらいの優しい女子だ。
左側は、あまり関わりはなかった同じ小学校の出身の凜人君。髪はさっぱりマッシュヘアーになっていて身長は156cmくらいの男子だ。
後ろ側は、まだ名前を知らない男子だった。
前側は、少し髪が長くてすらっとした背の後ろ姿しか見えないけど多分、初めましての人だった。
しばらくは、この席での生活が続くらしい。まずは、周りの人と仲良くなれたらいいな。
少しの休み時間が始まったから、前の席の人の顔を知ろうと立ち上がった。
ちょうど、落し物をしていたのだ。
「あの、消しゴム落としてましたよ。」
「ありがとう、ございます⋯!」
その男子は私を見て、驚いた顔をしていたように思えた。
でも、すぐさま笑顔に戻り会釈をしてくれた。
どこかで見覚えのある顔なんだけど、全然思い出せない⋯。
なぜか⋯あの笑顔を見た時、胸が締め付けられるように苦しかった。
─ 一体、君は私にとってどんな存在なの?
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